外国語科(5・6年)の内容のまとまりは、聞くこと/読むこと/話すこと[やり取り]/話すこと[発表]/書くことの5領域です。ところが実技テストで測れるのは、たいてい話すことの2領域だけです。本サイトのパフォーマンステストも16単元すべて話すことに寄せてあります。1分で見取れる形に絞ると、そうなります。
では残りの3つ、聞くこと・読むこと・書くことは、いつ、何で見ればよいのか。ここがあいまいなまま学期末を迎えると、通知表の3観点は「話せたかどうか」だけで決まってしまいます。この記事は、その3領域の見取りをふだんの授業の紙に割り当てる手順です。
まず、3領域が求めている中身を確かめる
見取りが難しいのではなく、目標を取り違えているために測れなくなっている、という場合が少なくありません。誤解の多い順に、学習指導要領(平成29年告示)第2章第10節 外国語の領域別目標を確認します。
読むこと——「読み方」とは文字の名前のこと
ア 活字体で書かれた文字を識別し、その読み方を発音することができるようにする。 イ 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現の意味が分かるようにする。
アの「読み方」は、文字の名称を指します。学習指導要領解説 外国語活動・外国語編は、a や c には /ei/ /siː/ という名称と、語の中で示す音(bag の /æ/、city の /s/ など)の両方があるとしたうえで、この目標の「読み方」は音ではなく名称のほうだと明記しています。F を見て /ef/ と言えるか、が到達点です。
文字の音を扱わないという意味ではありません。解説はイの指導について、児童の段階に応じて語の中で使われるときの音の読み方も指導するとしています。指導では音にも触れ、評価の的は名称に置く、という関係です。
ですから、英文をすらすら音読できるかを読むことの評価にはしません。逆に、大文字と小文字を見分けて名前が言えれば、アは達成です。イのほうは、絵や掲示など言語外情報を伴って示された語句の意味が分かる段階で、意味を推測して読むことが想定されています。友だちのポスターを見て「これはイタリアのことだ」と分かる、あの場面です。
書くこと——書き写しと、例文の一部の置き換えまで
ア 大文字、小文字を活字体で書くことができるようにする。また、語順を意識しながら音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写すことができるようにする。 イ 自分のことや身近で簡単な事柄について、例文を参考に、音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を用いて書くことができるようにする。
イの「例文を参考に」が要点です。解説は、参考にする文や文章の一部の語、あるいは一文を、自分が表現したい内容のものに置き換えて書く活動を挙げています。ゼロから英作文させることは求められていません。「音声で十分に慣れ親しんだ」も両方にかかっているので、話していない表現を書かせる課題は、この目標の外側にあります。
アの評価では、文字の高さと形の紛らわしさが見どころになります。解説も、a・c・e と f・l と g・y の高さの違い、p と q、b と d の紛らわしさを指導の工夫として挙げています。四線のどの部屋を使うか、語と語の区切りが空いているか、大文字で始まっているか。ここが書くことの中身です。
聞くこと——3段階で、前提は「ゆっくりはっきり」
ア ゆっくりはっきりと話されれば、自分のことや身近で簡単な事柄について簡単な語句や基本的な表現を聞き取ることができるようにする。 イ ゆっくりはっきりと話されれば、日常生活に関する身近で簡単な事柄について、具体的な情報を聞き取ることができるようにする。 ウ ゆっくりはっきりと話されれば、日常生活に関する身近で簡単な事柄について、短い話の概要を捉えることができるようにする。
中学校の目標が「はっきり話されれば」なのに対し、小学校は「ゆっくりはっきりと話されれば」です。速さの条件がついているのは小学校のほうで、ゆっくり話すところまでが目標の前提に入っています。イの「具体的な情報」は、誕生日・時刻・値段のような、児童の生活と密接に関係する情報を指します。ウは一語一句ではなく全体の大まかな内容が分かればよい段階で、解説は、中学校と違って音声だけで捉えるのではなく、イラストや写真などの視覚的な情報も参考にしながら概要をつかめればよい、としています。ALTの自然な速さで、絵もなしに流して聞き取れなかったから、という判断は、この前提から外れます。
何で見るか——単元パックのどの紙が証拠になるか
3領域とも、専用のテストを新たに作る必要はありません。ふだんの授業で使っている紙が、そのまま証拠になります。本サイトの教材で言えば次のとおりです。
| 領域 | 見る場面 | 手もとに残る証拠 |
|---|---|---|
| 聞くこと | Small Talkの反応、聞き分けの活動(小6 Made in マップの仕分け、小5 道案内で指をたどる場面)、教室英語の指示どおりに動けているか | 活動シートの仕分け・記入(マップの国分け、聞き取った値段)、きくワーク(小5 Unit 1) |
| 読むこと | 文字の識別(アルファベットの教材=大文字・小文字ペアカード、文字あつめノート、ならべかえ・ぬけた文字さがし)、友だちの作品を読む場面(オリジナルメニュー、日本のすてきポスター、思い出パネル) | 「おきゃくさんメモ」の注文したもの欄。ほかは紙に残りにくいので、活動中の見取りで補う |
| 書くこと | かきかたワーク(なぞる→ことばバンクから選んで書く。小5 Unit 1だけは、なぞる→写す→自分の名前を書く)、作品に添える英文(ポスター・マップ・パネルの3〜5文) | かきかたワークそのもの、作品の英文 |
作品に書いた英文は、書くことの証拠であると同時に、読むことの材料にもなります。お店屋さんロールプレイなら、お客役が友だちのグループのメニューを読んで注文し、注文したものを「おきゃくさんメモ」に書きます。書いた側の紙と、読んだ側の紙が、同じ活動で1枚ずつ残る。単元を増やさずに3領域を拾えるのは、この重なりのおかげです。ただし、どこまで読めていたかは紙に出きらないので、そこは活動中の見取りで補います。
聞くことだけは、紙に残りにくい領域です。指示どおりに動けたか、絵カードを正しく選べたかは、その場で消えてしまいます。活動シートの記入欄(聞き取った値段を書く、聞こえた国でカードを仕分ける)を証拠として使うと決めておくと、あとから見返せます。
年間で領域を割り振る——1単元1領域でよい
5領域×3観点を毎単元記録しようとすると、8時間の単元に15マスの表ができあがります。これは物理的に無理です。評価規準の作り方でも触れたとおり、評価規準は内容のまとまり(=領域)ごとに作り、記録に残す評価は1単元で1領域、多くて2領域に絞ります。
年間では、5領域が一巡すれば足ります。小5の8単元なら、たとえばこうです(Unit番号は NEW HORIZON Elementary 5 のもの)。
| 学期 | 単元 | 記録に残す領域 |
|---|---|---|
| 1学期 | Unit 1 自己紹介/Unit 2 誕生日/Unit 3 できること | 話すこと[やり取り](Unit 1)/書くこと(Unit 2=月・日づけ・ほしいものを書く) |
| 2学期 | Unit 4 身近な人/Unit 5 町・道案内/Unit 6 レストラン | 聞くこと(Unit 5=道案内を聞いて地図をたどる)/読むこと(Unit 6=友だちのオリジナルメニューを読んで注文する) |
| 3学期 | Unit 7 日本のすてき/Unit 8 あこがれの人 | 話すこと[発表](Unit 7=ポスター発表)/話すこと[やり取り](Unit 8) |
Here We Go! 5 は並びが違うので、番号ではなく単元名で読み替えてください(できること=Unit 4、あこがれの人=Unit 5、道案内=Unit 6・8、レストラン=Unit 7。「日本のすてき」は光村では6年 Unit 2 の配当です)。どの単元がどの教科書のどこに当たるかは、単元一覧の各ページに書いてあります。
大切なのは配分の正解ではなく、どの単元でどの領域を記録するかを年度のはじめに決めておくことです。決めていないと、記録が話すことに偏ったまま学期末になります。逆に決めてあれば、その単元では他の領域を記録しなくてよい、と胸を張って手を抜けます。
3・4年の外国語活動(Let's Try! 1・2)には、読むことと書くことの領域そのものがありません。領域は聞くこと・話すこと[やり取り]・話すこと[発表]の3つで、指導要録には数値の評定もA・B・Cもつけず、顕著な事項を文章で端的に書きます。文字にまったく触れないわけではなく、聞くことのウが「文字の読み方が発音されるのを聞いて、どの文字か分かる」なので、アルファベットの教材はここで生きます。読ませる・書かせるが始まるのは5年からです。3・4年の見取りは外国語活動の所見の書き方にまとめています。
ペーパーテストを使うときの見きわめ
市販の単元テストを使う学校も多いと思います。使うこと自体に問題はありませんが、答案の点数がそのまま3観点になるわけではないので、次の2点だけ確かめておくと安全です。
- 音声のない設問で、聞くことを測っていないか。聞くことは「話されれば聞き取る」力なので、音源なしでは評価できません。
- 書くことの設問が、書き写しと例文の置き換えの範囲に収まっているか。日本語文を見て英文を自力で作らせる問題は、小学校の目標の外側です。解けなかったことを書くことのcにするのは酷な話になります。
読むことの設問は、まず授業で音声から十分に慣れ親しんだ語句かどうかを見ます。そのうえで、絵や掲示のような文字以外の手がかりが添えられているか。手がかりのないまま初見の語を読ませる設問は、中学校の読解に近づいています(選択肢は文字なので、ここでいう手がかりには数えません)。
記録の紙と、所見への行き先
領域ごとの見取りを1枚に集めるために、きろくパスポート(小5・小6の2種)の先生面に「聞く・読む・書くはどこで見るか」の表を載せてあります。児童面は言えた文の数・話した相手の数・自分から出した質問の数を書く欄で、回収は学期末の1回だけ。点検簿ではなく児童の持ち物として渡します。5領域の到達目標そのものはcan-doリスト(各学年5領域×3段)にあり、パスポートがその記録という関係です。
学期末には、3領域の姿はそのまま所見になります。「掲示のアルファベット表を見ながら、友だちの名前のつづりを声に出して確かめていました」(読むこと)、「かきかたワークで、語と語の間をあけて書き写せるようになりました」(書くこと)、「道案内を聞いて、地図の上の指を止める場所を正しく選んでいました」(聞くこと)。話すことに寄りがちな所見に、この3つが1文ずつ混ざるだけで、通知表の見え方が変わります。文例の組み立て方は所見の書き方へ、単元ごとの文例は所見文例集にあります。単元と観点を選んで下書きを作るならしょけんビルダー(児童の名前は入力しない設計です)もあります。
中学校では、この3領域がそのまま定期テストの技能別の設問になります。中学校で1年生を受け持ってきた立場から言えば、「文字の名前が言える」「例文を見て書き換えられる」まで届いている子は、文字と文法が始まる入り口で立ち止まりにくいと感じます。評価の年間の流れは評価と所見のハブにまとめています。