学期末が近づくと、外国語の所見だけが最後まで残ります。国語や算数のように「何を書けばその教科の記録になるのか」の手がかりが少ないからです。小学校教諭の授業準備時間は全教科あわせて平日1日あたり76分(文部科学省 教員勤務実態調査 令和4年度確定値)。所見はその外側の仕事で、しかも人数分あります。1人ずつ悩んで書く方式そのものを変えたほうが早く終わります。
この記事は、5・6年の外国語科の所見を型で書くための手順です。文例そのものは単元別の所見文例に144本あるので、ここでは裏側の組み立て方を扱います。評価全体の流れは評価と所見のハブにあります。
所見は評定の言いかえではない
最初に整理しておきたいのが、通知表と指導要録の違いです。指導要録は学校が備える公簿で、様式や記載事項は国の通知が土台になります(平成31年3月29日 30文科初第1845号・文部科学省)。一方の通知表は法令上の様式が定まっておらず、何をどの欄にどれだけ書くかは各校の裁量です。書き始める前に自校の様式を確認してください。教科ごとに欄があるのか、総合所見に他教科と同居するのか、目安の文字数はいくつか。ここで分量が決まります。
そのうえで、所見はABCの評定を日本語に言いかえたものではありません。「Bなので、おおむねできています」には情報がありません。所見は、観点に照らして見取ったことを文章で記述するものです。3・4年の外国語活動では、指導要録に評定を書かず、顕著な事項を文章で端的に記述します(外国語活動の所見)。5・6年の外国語科は、指導要録では観点別学習状況と評定で記録し、文章は「総合所見及び指導上参考となる諸事項」に入ります。教科ごとの文章欄があるのは通知表のほうです。通知表の所見に求められる役割は3・4年と同じで、評定では伝わらない「その子が何をできるようになったか」を1〜2文で残します。
書き方の型は3つ
所見が書けなくなるのは、白紙から文を作ろうとするからです。次の3つを埋めると決めれば、材料を探すだけの作業になります。
| 要素 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| ①活動名 | 単元名や活動名を具体的に | バースデーライン/だれでしょうクイズ/名刺こうかん会 |
| ②できるようになったこと | 評価規準のことばを使う | 誕生日を伝え合う/相手に応じて内容を選ぶ |
| ③子どもの姿 | 実際に見た場面を1つだけ | カレンダー表を指さして確かめながら |
順番は入れ替えてかまいません。むしろ②や③から書き出すほうがよく、同じ子が何度も同じ文型の所見を受け取るのを防げます(3学期制なら年3回です)。公開している文例のうち3観点とはげまし型のものは、この3点で組み立ててあります。中学校への接続を書く「接続型」だけは別の型で、①も③も入れません。
分解してみます。まず誕生日・ほしいものの単元から、知識・技能の文例(タグ「知技・b」)です。
「カレンダー表を指さして確かめながら、バースデーラインで My birthday is May 5th. と誕生日を伝えて並ぶことができました。ほしいものも I want .... の文で言えるようになっています。」
1文目が③(カレンダー表を指さして)→①(バースデーライン)→②(誕生日を伝える)の順です。③から入ると、その子だけの文になります。
次にあこがれの人の思考・判断・表現。
「聞き手にその人のよさが伝わるように、話す順番とカードの見せ方を自分で選びました。紹介大会では「Why?」の問い返しにも、得意なことをもう一度あげて自分のことばで答えています。」
②(相手に伝わるように内容と伝え方を選ぶ)が先頭で、①③が後ろに続きます。①は教材でいえば「マイヒーロー・カードでつたえ合おう」の場面です。小学校では because を産出させないので、当サイトの教材では理由を「さっきの文をもう一度言う」「既習の文をもう1文足す」形で表しています。所見でも「理由を言えなかった」ではなく「もう一度あげて答えた」と書きます。
態度の文例も同じ型です。自己紹介・名前のつづりの単元から。
「振り返りカードに毎時間のめあてと手ごたえを1行ずつ書きため、うまく言えなかった表現を次の時間に言い直そうとするなど、自分の学び方を調整しながら粘り強く取り組みました。」
態度は、粘り強く取り組もうとする側面と、学び方を調整しようとする側面の2つで見ます。この文は「振り返って次に生かした」1つの姿で両方を書いています。姿を並べるのではなく、1つを最後まで書き切ります。
観点ごとの言い回しと文末
観点が変わると、同じ活動でも拾う場面が変わります。
| 観点 | 所見に書く中身 | 評価規準の文末 | 所見での言い方 |
|---|---|---|---|
| 知識・技能 | どの表現を、どんな場面で使えたか | 〜している | 〜を使って…伝えることができました |
| 思考・判断・表現 | 目的に応じて、内容や伝え方をどう選んだか | 〜している | 〜が伝わるように…選びました |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 続けよう・工夫しようとした姿、振り返って調整した姿 | 〜しようとしている | 〜しようとする姿が見られました |
評価規準そのものの作り方は評価規準の作り方に分けて書きました。国立教育政策研究所の「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(令和2年3月)に、語句を差し替えて使える文型が載っています。
文末は混同しやすいところです。外国語科(5・6年)の評価規準は「〜している」で、態度だけ「〜しようとしている」で結びます。外国語活動(3・4年)で「〜に慣れ親しんでいる」と結ぶのは知識・技能で、思考・判断・表現は「伝え合っている」、態度は「伝え合おうとしている」です(同資料の巻末資料)。3観点をまとめて「慣れ親しんでいる」にはしません。所見の本文は保護者が読む文章なので「〜できました」でかまいませんが、②に入れることばは規準から持ってきます。ここが揃っていると、評定と所見が食い違いません。
はげまし型で書く
あと少しの子の所見が、いちばん時間を食います。「まだ〜できていません」と書きたくなりますが、通知表は保護者と本人が読みます。できなかったことを書く代わりに、支援つきでできたことを書きます。条件を先に置くのがこつです。
- 掲示を見ながらであれば
- カードを手元に置けば
- 表を指さして確かめながら
- ことばバンクから語を選んで
条件を書くと、今どこまで届いているかが正確に伝わります。文例です。
「We have ... in .... の1文を、ポスターの台本を見ながらはっきり言えるようになりました。ことばバンクから語を選んでポスターに書き入れた時間が、そのまま自信につながっています。」
なおcan-doリストの★は、この支援量の階段を3段に分けたものです。★1は掲示や手元のカードがあればできる、★2はひとりでできる、★3は支えなしで自分から、理由まで添えられる段です。★3は「教科書を超えて届いた」ところなので、全員が届かなくてかまいません。到達の目安であって成績ではなく、所見に「★2でした」と書くものでもありません。
所見に書かないほうがよいこと
外国語の題材は、自己紹介・誕生日・宝物・行きたい国と、子どもの生活に近いものばかりです。活動の中身をそのまま所見に書くと、家庭の状況に触れてしまうことがあります。
- 誕生日にほしいものの中身、行きたい国や旅行の経験、宝物が何だったか、あこがれの人がだれか(家庭や経済の状況への言及になり得ます)
- 他の子との比較(「クラスでいちばん」「〜さんより」)
- 英会話教室に通っているかどうか、海外で生活した経験の有無
- 「英語が得意です」「苦手です」のような英語力そのものの断定
- 欠席や転入で参加できなかった行事にふれる記述
書くのは、たずね方・伝え方の成長だけです。同じ考え方で、児童の氏名など個人が特定できる情報は外部サービスに入力しません。しょけんビルダーも、児童名を入力しない設計です。
時短は「単元→観点→文」の順で
1人ずつ書くと、児童の数だけ「単元を思い出す→観点を選ぶ→ことばを探す」の3工程を繰り返します。順番を入れ替えます。
- 学期に扱った単元から、所見の材料にする単元を1つか2つ選ぶ
- 観点を1つ決める(迷うなら知識・技能から)
- その観点のまま、クラス全員を名簿の上から流す(並べ替えられるなら次の工夫が効きます)
同じ単元・同じ観点で続けて書けば、②のことばを毎回探し直さずに済みます。手元のメモをパフォーマンステストのa・b・cの記録順に並べ替えておくと、さらに速くなります。同じ評価の子が固まるので、変えるのは③の姿と書き出しだけだからです。並べ替えるのは入力画面ではなくメモのほうです(校務支援システムの入力欄は名簿順で固定されていることが多い)。記録の残し方はパフォーマンステストの回し方にまとめました。
分量も様式に合わせます。全国共通の目安はないので、自校の昨年度の記載例を数えるのが確実です。総合所見に他教科と同居する様式なら、外国語は1文で終えることもあります。使える文字数が決まれば、③の姿をいくつ入れるかも決まります。
小6の英語が中1でどうつながるかを見てきた立場から言えば、「支えがあればここまで言えた」という記述は、評定のアルファベット1文字では残らない情報です。限られた文字数に、そこを入れてください。