評価規準づくりは白紙の作文に見えますが、実際は穴埋めに近い作業です。国立教育政策研究所の「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(小学校 外国語・外国語活動、令和2年3月)に観点ごとの文型が例示されていて、そこへ単元のことばを4か所入れれば形になります。
小学校教諭の授業準備時間は全教科合わせて平日1日あたり76分(教員勤務実態調査 令和4年度確定値)。小・中学校の教員196人(うち小学校相当137人)への調査でも、英語の授業で困っていることの最多は評価方法で59.9%でした(NPO法人 教育改革2020「共育の杜」・2025年7〜8月実施)。ここでは小5「誕生日・ほしいもの」の単元パック(NEW HORIZON Elementary 5 Unit 2 "Happy birthday!" 全8時間)を材料に埋めていきます。光村 Here We Go! 5 Unit 2 でも手順は同じで、型は教科書の発行者に依存しません。
「内容のまとまり」は5領域のこと
外国語科の評価規準は「内容のまとまりごと」に作ります。小学校外国語の内容のまとまりとは、次の5領域そのものです。
- 聞くこと
- 読むこと
- 話すこと[やり取り]
- 話すこと[発表]
- 書くこと
[やり取り][発表]の角括弧までが正式名称です。指導要録や年間指導計画と表記をそろえます。
先に決めるのは「この単元でどの領域を記録に残すか」です。参考資料に本数の規定はありませんが、実務上は1単元で1領域、多くて2領域に絞ると8時間に収まります。es5-birthdayは誕生日をたずね合ってカレンダーを作る単元なので、記録に残すのは話すこと[やり取り]だけです。年間で5領域が一巡するように割り振る考え方と、話すこと以外の3領域を何で見るかは聞く・読む・書くの評価にまとめました。
単元のことばを4か所に切り出す
型に入れる前に、単元から4つの材料を取り出します。ここさえ書ければ、あとは機械的な作業です。
| スロット | 何を書くか | es5-birthdayでの中身 |
|---|---|---|
| 目的等 | 誰に、何のために伝えるのか(単元ゴール) | クラスのバースデーカレンダーづくり |
| 事柄・話題 | 何について話すのか | 誕生日やほしいものについて |
| 言語材料 | 単元の主要表現 | When is your birthday? / My birthday is .... / What do you want for your birthday? / I want .... |
| 内容 | 具体的にどうするのか | 誕生日とほしいものを伝え合う |
目的等は「〜づくり」の名詞句で持っておくと、「【目的等】に応じて」にも「〜を作るために」にも変えられます。
つまずくとすれば目的等です。ここが書けないのは、単元ゴールが「月の名前を覚える」のような知識の列挙になっている合図で、ゴールを先に作り直すほうが結局は早く終わります。
型に入れて3観点の文にする
参考資料が例示している文型は次のとおりです。4スロットを差し替えるだけです。
- 知識: 【言語材料】について理解している
- 技能: 【事柄・話題】について、【言語材料】などを用いて、【内容】を伝え合う技能を身に付けている
- 思考・判断・表現: 【目的等】に応じて、【事柄・話題】について、簡単な語句や基本的な表現を用いて【内容】を伝え合っている
- 主体的に学習に取り組む態度: 思考・判断・表現と同じ文で、文末だけ「伝え合おうとしている」に変える
es5-birthdayに当てはめると、こうなります。知識と技能は指導要録では1つの観点なので、実務では一文にまとめます。
| 観点 | 単元の評価規準 |
|---|---|
| 知識・技能 | When is your birthday? / My birthday is .... / What do you want ...? / I want .... などの表現について理解しているとともに、誕生日やほしいものについて伝え合う技能を身に付けている。 |
| 思考・判断・表現 | クラスのバースデーカレンダーを作るために、誕生日やほしいものについて、簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合っている。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | クラスのバースデーカレンダーを作るために、誕生日やほしいものについて、簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合おうとしている。 |
参考資料は、これらの文型は例示であり語順等はこの通りでなくてよい、と明記しています。圧縮のルールは1つで、同じスロットが一文に二度出るときは1回しか書きません。知識・技能では【言語材料】を前半に一度だけ置き、【内容】は【事柄・話題】と重なるので片方に寄せました。思考・判断・表現の「【目的等】に応じて」は「〜を作るために」と言い換えています。
文末は観点と校種で決まります。
| 対象 | 観点 | 文末 |
|---|---|---|
| 外国語科(5・6年) | 知識・技能/思考・判断・表現 | 〜している |
| 外国語科(5・6年) | 主体的に学習に取り組む態度 | 〜しようとしている |
| 外国語活動(3・4年) | 知識・技能 | 〜に慣れ親しんでいる |
3・4年は数値の評定をつけず、指導要録では観点に照らして顕著な事項がある場合にその特徴を文章で端的に記述します(平成31年3月29日 30文科初第1845号)。文末を取り違えると、外国語科の規準を3年生に当てているように読めます。外国語活動のほかの観点は、参考資料の外国語活動編にある例をそのまま写すのが確実です。3・4年の書き方は外国語活動の所見の書き方にまとめました。
書き上げたら、未習の事項を求めていないか読み返します。「理由を添えて」と書くと because を想起させますが、小学校で because は扱いません。扱わないのは because であって、理由を述べること自体ではありません。理由は、同じ文をゆっくりもう一度言う、It's fun. のような既習の1文を足す形で表すのが教材全体の方針です。後述するcan-do★3の「理由をつけて」も、この形を指しています。
技能の「言語材料の提示がない状況で」を担任の目線に落とす
参考資料は、技能を「言語材料の提示がない状況で」使えるかどうかで評価すると整理しています。黒板の型を全部消して抜き打ちで試す、という意味ではありません。
知識は「型を見せれば言える」段、技能は「その場で自分から出てくる」段だと考えると、担任の目線に落ちます。掲示は消さなくてよく、見るのは頼り方の量です。es5-birthdayのパフォーマンステストも、黒板のキーフレーズとカレンダー表を掲示したまま実施する設計で、ルーブリックの知識・技能の段をこう分けています。
- a: 掲示にほとんど頼らずに、誕生日とほしいものまで伝えられる
- b: 支えの質問を受けながら、どちらかを1文で言える
- c: カレンダー表や絵カードを指さして単語で伝えられる
頼り方で段を分ければ、1人1分のテストでも判断できます。1人約1分×35人で35〜40分。40人学級なら2時間に分けるか、待機のタスクを厚くします。回し方はパフォーマンステストの回し方で扱います。
記録に残す評価は8時間で2〜3回でよい
参考資料の事例は、毎時の計画に◎(記録に残す評価)の場面と方法を書き込むと同時に、記録に残す評価を行わない時間も明示しています。毎時間全員を見取らなくてよいということです。8時間ぶん記録しようとするのが、評価のつらさの正体です。
es5-birthdayの略案では、◎は3回だけです。
| 時 | 主な学習 | 記録 |
|---|---|---|
| 1〜4 | 月・日づけ・ほしいものの言い方に出会い、慣れる | 記録に残さない |
| 5 | カレンダーづくりのインタビュー① | ◎行動観察(知識・技能) |
| 6 | インタビュー②→中間指導→カレンダー完成 | ◎行動観察(思考・判断・表現) |
| 7 | 世界の誕生日の祝い方を聞く・お披露目 | 記録に残さない |
| 8 | パフォーマンステスト+振り返りカードの点検 | ◎テスト(知識・技能/思考・判断・表現)+振り返りカード(態度・単元全体) |
記録は名簿にa・b・cを1つ書くだけです。このa・b・cは授業中の見取りの段で、指導要録のA・B・C(十分満足/おおむね満足/努力を要する)にどう寄せるかは学期末にまとめて判断します。1〜4時と7時は、声が出ているか助け合えているかを見るだけの時間です。
態度は1時間の挙手の回数で決めるものではありません。粘り強く取り組もうとする姿と、自分のやり方を調整しようとする姿の2側面を、単元、さらに年間を通して見ます(参考資料も、見通しと振り返りは年間を通して評価する立場です)。es5-birthdayなら、聞き取れないときに One more time, please. と自分から聞き返した姿がそのまま記録になります。
can-doリストとの関係と、書いた規準の行き先
can-doリストとは役割が違います。can-doは学年の5領域別の目標で、1年かけて上がる階段。評価規準は、その中の1単元で使う物差しです。can-doリストの★は、支援の量と、求めるやり取りの質の段(★1 支えがあればできる、★2 ひとりでできる、★3 支えなしで、自分から、理由をつけて)で、成績そのものではありません。配るときに、★の数が評定になるのではないと先に伝えておきます。
型に入れて作った3文には、行き先が3つあります。
- 略案の◎の欄。どの時間に、どの方法で見るかを1行で書く
- ルーブリックのa・b・cの文。「ほとんど頼らずに」「支えを受けながら」で三段に割る
- 学期末の所見の文。規準のことばが、そのまま所見の骨になる
所見が書けないのは、文章力ではなく規準のことばがないからである場合がほとんどです。単元別の所見文例は、この手順で作った規準のことばで書いてあります。組み立て方は所見の書き方へ。単元と観点を選んで下書きを作るならしょけんビルダー(児童の名前は入力しない設計です)があります。
通知表の様式や所見欄の文字数は学校ごとに違うので、そのまま貼る前に自校の様式を確認してください。中学校で小学校からの接続を見てきた経験から言えば、「伝え合おうとしている」と見取られた姿は、中学校の学習にもつながっていく部分だと考えています。評価の全体像は評価と所見のハブにまとめています。