話すこと[やり取り]と話すこと[発表]は紙のテストで測りにくいので、外国語科ではパフォーマンステスト(実技テスト)が避けて通れません。ところがつまずくのは、課題の中身よりも先に「時間」と「待っている子」です。35人学級の45分1コマに本当に収まるのか。テストを受けていない34人は何をしているのか。この2つが解けていない案は、どれだけ立派なルーブリックがついていても実行できません。小6の英語が中1でどうつながるかを見てきた立場から言うと、中学校のスピーキングテストでつまずく場所も重なります。
45分に収まるかどうかは、時間の算数で決まる
1人あたり約1分。35人で35分、席の入れ替わりを入れて35〜40分です。ここにはじめのあいさつと最後の振り返りの5分を足して40〜45分。先生と1対1という一番ぜいたくな形が、時間の上でぎりぎり成立します。40分を超えそうな見込みなら、課題をもう一段削るか、2時間に分けます。
逆に成立しないのが1人3分の設計です。発表を最後まで聞いて質問を3往復すると3分はすぐ過ぎますが、3分×35人は105分。2コマでも足りず、3コマ目に食い込みます。ここで「ペアで相互評価に」と逃げると、今度は先生が誰も見取れません。1コマで回すなら、課題を1分で見取れる大きさに絞るのが先です。誕生日の単元なら、あいさつ、質問を2つ(When is your birthday? / What do you want for your birthday?)、リアクションへの反応、Thank you! See you! の5つの発話。1分でも、たずね方と答え方の両方が見えます。
日程は単元の最終時に置きます(NEW HORIZON Elementary なら第8時、Here We Go! なら第7時)。誕生日の単元の略案では、知識・技能は第5時、思考・判断・表現は第6時の行動観察ですでに記録に残してあります。最終時のテストは、その2つの確認と、振り返りカードの点検とあわせて態度を記録する場です。国立教育政策研究所の「指導と評価の一体化」参考資料(令和2年3月)が示すとおり、毎時間すべての児童を記録に残す必要はなく、記録に残す場面と方法を決めておくのが本来の流儀です。テストの日は予告し、前の時間に本番と同じ形を1回通しておきます。
待っている34人に何を渡すか
ここが最大の実務課題です。待ち時間の仕事は、次の3つを同時に満たすものだけが使えます。
- 英語を使い続ける(日本語の自習になると、45分の大半が英語の時間でなくなる)
- 答えが漏れない(テストと同じやり取りを大声でやると、後半の子は記憶力テストになる)
- 先生が見ていなくても回る(テスト席から目を離せないので、指示なしで完結する仕事が要る)
この3条件を満たす実物が、es5-birthday(NEW HORIZON Elementary 5 Unit 2 "Happy birthday!" / Here We Go! 5 Unit 2 対応)のパフォーマンステストに付けたローテ表です。班は4つに分けます。
| グループ | やること | 使うもの |
|---|---|---|
| A(テスト中の班) | 順に呼ばれてテスト席へ。呼ばれる前と終わったあとは、席でBと同じことをする | 自分のカード |
| B | 同じインタビューのミニ版を班の中で小声で | 活動シート |
| C | 絵カードのミッシングゲーム(1枚かくす→英語で当てる・かくす役は交代・小声で) | 絵カード(班用) |
| D | 単元のまとめを振り返りカードに書く | 振り返りカード(学校で使っているもの。単元パックには入っていません) |
1班のテストが終わるごと(9〜10分ごと)に、A→B→C→D→Aと役割が1つずつずれます。テストを終えた班がBに入り、Dにいた班が次のテスト班になります。35人なら1班8〜9人=1班9分ほどなので、4班で35〜40分。テスト席横の待機イスに座るのは、呼ばれる直前の1人だけです。
見落としやすいのが、テストを終えて席にもどった子の仕事です。ここを決めておかないと、早く終わった子から順に手持ちぶさたの時間が最大8分ずつたまり、そこから答えが漏れます。A班の子は、呼ばれる前も終わったあとも、席でBと同じことをして待ちます。もう1つ、テストの日は帯活動を置きません。帯の5分を入れると、テストの35〜40分と振り返りが45分に入らなくなります。「クラスの◯◯ランキング発表」のような単元の締めくくりは、前の時間の帯に回すと最後まで気持ちよく終われます。
Bは英語を使い続けるための枠ですが、声は小声で班の中だけ。大声でやらせると条件2が壊れます。CとDは手が動く作業なので、先生が見ていなくても止まりません。
呼ぶ順番は名簿順ではなく班ごとにします。名簿順だとペア活動の途中で相手が抜けて活動が止まりますが、班ごとなら壊れません。早く終わった子に先生役や補助を頼むのも避けます。そのぶん英語を使う機会を失うからです。
ルーブリックはa/b/cの3段、cは手立てを書く欄にする
段階は3つで十分です。5段階にすると、1分の会話の直後に「3か4か」で迷い、次の子が待ちます。
| 観点 | a | b | c |
|---|---|---|---|
| 知識・技能 | 掲示にほとんど頼らず、質問に答えて自分のことを伝えられる | 支えの質問を受けながら1文で言える | 表や絵カードを指さして単語で伝えられる |
| 思考・判断・表現 | 質問に合う答えを選び、反応や聞き返しでやり取りを落とさず続けられる | 質問に合った答えを返せる | 質問と答えがずれる |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 単元を通して自分からたずね、続けようとしていた | 活動に参加し、振り返りに手ごたえが書かれている | 振り返りが書けていない |
このa/b/cは、その場で丸を付ける見取りのメモ用の段で、指導要録のA・B・Cとは別物です。表のことばも見取りの目安なので、下に書く評価規準の文末ルールとは分けて考えます。
cの欄で大事なのは、「できていない」で終わらせないことです。cと書いた瞬間に次の一手が出るよう、その場で打つ手立てを先に書いておきます。知識・技能のcなら「カレンダー表を一緒に指さしながら1文だけ再挑戦させる」、思考・判断・表現のcなら「質問をゆっくり言い直し、絵カード2択で選ばせる」。テスト中に手立てを考える余裕はないので、先に書いておくと時間の節約になり、テストが指導の場にもなります。
態度の観点は1分のテストでは測らず、単元全体の姿で見ます。評価規準の文末は外国語科(5・6年)が「〜している」「〜しようとしている」、3・4年の外国語活動は「〜に慣れ親しんでいる」です。外国語活動は指導要録に数値の評定もA・B・Cも付けず、顕著な事項を文章で端的に記述します(通知表の様式は各校の裁量です)。3・4年は外国語活動の所見に、規準の作り方は評価規準の作り方にまとめています。
先に「評価しないもの」を決めておく
ルーブリックを書く前に、評価しないものを決めます。教材の側でも「評価しない項目」を明記してあります。誕生日の単元なら次の3つです。
- 序数の細かい発音(fifteenth など)
- in の有無(in May でも May 5th でも同じ)
- ほしいものの中身・値段・実際にもらえるかどうか
教材に書いてあるのはこの3点です。声の大きさを外すかどうかは学校で決めます。相手に届く声は「相手意識」として指導の対象にできるので、一律に対象外とは書いていません。
先に決めるのは、1分の判断から迷いを消すためと、家庭の事情や生活背景が成績に混ざるのを防ぐためです。将来の夢の単元でも「夢が決まっているかどうか」は評価しません。I don't know yet, but I like science. は満点の答えです。
Why? はテストでもたずねます。未習なのは because のほうなので、答えに because は求めません。理由は He is kind. / I like music. のように、既習の文をもう一度言う形で表します。ヒーロー紹介の単元の活動ルールも「聞く人はかならず Why? を1回きく」です。
支援は出したままで構いません。黒板の型、キーフレーズポスター、絵カード、カレンダー表。取り上げると測れるのは記憶力になります。代わりに、支援量そのものを記録します。can-doリストの★は、★1が支えがあればできる、★2がひとりでできる、★3が支えなしで自分から、理由をつけて言える、という支援量の階段です。★の数は成績ではなく、次にどこを助けるかの目印です。
記録は名簿にa/b/cと語を1つ
テスト中に書けるのは記号1つと単語1つだけです。1分の中で文章を書こうとすると、次の子が待ちます。名簿の余白にこう書きます。
- a/How about you?
- b/表を指さし
- c/May! のみ
この短いメモが、学期末の所見のもとになります。所見は、①活動名(具体)②できるようになったこと(評価規準のことば)③子どもの姿を1つ、の3つで組み立てます。テストの1分で見た姿だけで書かず、単元の中で見てきた姿とあわせます。「b/表を指さし」なら、「カレンダー表を指さして確かめながら、誕生日とほしいものを1文で伝えることができました」という1文になります。組み立て方は所見の書き方に、単元と観点から所見を組む道具はしょけんビルダーにあります(児童名は入力しない設計です)。
なお通知表の様式や所見欄の文字数は学校ごとに違います。記録に使う語を決める前に、自校の様式を確認しておくと書き直しが減ります。
ALTがいる日、いない日、日程の置き方
ALTがいる日は、テスト席に座るのを担任(または専科)にするのが安全です。評価の責任は授業者にあるので、採点をALTに委ねる形は避けます。ALTには待ち側のBに入ってもらい、ミニ版の相手役を頼むと待ち時間の英語の量が上がります。打ち合わせで伝えるのは「この時間は評価です」「私は前で1対1」「先生はBの相手役を」の3点と、テスト中は児童に答えを助けないことの確認です。英語での言い方はALT連携の記入式の打ち合わせシートに入れてあります。
ALTがいない日は、Bの活動を「先生の合図なしで班の中だけで交代できる形」にしておきます。合図が要る活動だと、テスト席から声をかけるたびに1人分の時間が消えます。
日程を単元の最終時に置くのは、学期末に切り出さず単元の中で終えるためです。記憶が新しいうちに名簿のメモを所見の語に変えておけば、12月や3月の所見づくりが別の作業ではなくなります。小学校教諭の授業準備時間は全教科あわせて平日1日あたり76分(文部科学省 教員勤務実態調査 令和4年度確定値)しかありません。評価は「単元の中で終わる仕事」に組み替えるほかありません。
外部の実例では、佐賀県教育委員会の外国語(英語)パフォーマンステスト事例集(2023年3月・ルーブリック付き。小学校の事例も収録されています)が参考になります。考え方の根拠は国立教育政策研究所の「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(小学校 外国語)(令和2年3月)です。
このテストで測っているのは、5領域のうち話すことだけです。聞くこと・読むこと・書くことをふだんの授業のどの紙で見るかは、聞く・読む・書くの評価にまとめました。
小5・小6の16単元には、パフォーマンステスト一式(進行の質問・ローテ表・a/b/cのルーブリック・所見文例つき)を付けて無料で公開しています。単元一覧から選び、誕生日の単元のパフォーマンステストのようにそのまま印刷して使えます。次の単元の最後の時間に1コマ確保するところから始めてみてください。評価の年間の流れは評価と所見のハブにまとめています。