3年生の担任です。外国語活動になると、何人かの元気な子の声で授業が進んでいきます。その裏で、まったく口を動かさない子が学級に5、6人います。当てると固まってしまうので当てないでいるうちに、その子たちが一度も英語を口にしないまま単元が終わってしまいました。(小3担任・外国語活動の担当は今年から)
結論: 目標は「話すようにする」まで。声ではなく、参加の段を用意する
まず、力を抜いてよいところから確認します。3・4年の外国語活動の目標は、学習指導要領解説 外国語活動・外国語編にこう書かれています。
ア 身の回りの物について,人前で実物などを見せながら,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すようにする。
文末は「話すようにする」です。5・6年の外国語科が「話すことができるようにする」であるのに対して、3・4年はそこまで求めていません。ある子の声が小さいこと、その時間に言えなかったことは、それ自体が未達ではないということです。
そのうえで、ご相談の「一度も英語を口にしないまま単元が終わった」は別の問題です。これは子どもの性格の話ではなく、その子が乗れる段が授業に用意されていなかった、という設計の話になります。ここは変えられます。
口が動かない理由は3つあり、手はそれぞれ違う
| 理由 | 教室での見え方 | 打つ手 |
|---|---|---|
| ①まだ音が入っていない | 何と言えばよいか分からない。周りを見てから動く。口を半分だけ動かす | 言わせる前に、聞く回数を増やす |
| ②聞かれる人数が多い | 一斉なら言えるが、当てられると止まる。ペアでは小さい声で言えている | 指名を後ろに回し、同時に動く形にする |
| ③まちがいがこわい | 言えるのに言わない。友だちの発音を気にする。「へんだった?」と聞く | 「言えた」の線を先に下げて宣言する |
3年生の2学期でいちばん多いのは①です。②と③は自意識の話で高学年に増えますが、3年生はまだ英語そのものが体に入っていない段階にいます。ここを③だと思って「まちがえていいよ」と励ましても動きません。言うべきことが分からない子に、その言葉は届かないからです。
①には、声を出さない活動で聞く回数を増やす
1つの単元で扱う語は8枚から16枚。そのうち子どもが「聞いた」のは何回か、1時間ぶんを数えてみてください。絵カードで1周、チャンツで数回——それだけで「じゃあ言ってみよう」に進むと、多くの子は音の記憶が薄いまま発声を求められます。
声を出さずに参加できる活動は、参加していないのではありません。外国語活動の3領域のうち「聞くこと」の活動そのものです。
言われた絵を指さすポインティングゲーム、聞いて取るかるた、聞いて教室の4隅へ動く4コーナー。どれも全員が同時に、声を出さずに参加できます。ミッシングゲームは答えるときだけ声が要るので、段が1つ上がります。
主活動の前にこの種を10分置くと、そのあとの「言ってみよう」で口が動く子が増えます。単元パックの活動シートは、この順に組んであります(Let's Try! 1・2 の単元一覧)。
②は、指名の順番と「動作」で変わる
当てると固まる子がいるなら、当てる順番を後ろに回します。全員で同時に言う→列や班で言う→ペアで1対1→希望者が全体の前で、の順です。当てないでおくと最後の段に一度も届かないまま単元が終わるので、前の3つを厚くして、全体の前は希望者だけにします。ペアまで来れば、その子は1人には英語を届けています。3・4年ではそれで十分です。
ここで効くのが、目標そのものに書かれている一言です。
イ 自分のことや身の回りの物について,動作を交えながら,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合うようにする。
「動作を交えながら」は目標の本文に入っています。ジェスチャーは言えない子のための代用品ではなく、3・4年で求められている伝え方そのものです。声の小さい子には、先に手の動きを決めさせてください。手が決まると声が出ます。同じ領域のウは「サポートを受けて」で始まっていて、支援つきでやり取りすることも目標のうちです。
参加の段を4つ用意しておく
授業を組むときは、この4段のどれかに全員が乗っている状態を作ります。
| 段 | 子どもがすること | 声 | 使える活動 |
|---|---|---|---|
| 1 聞く | 指さす、カードを取る | 出ない | ポインティング・かるた・ミッシング |
| 2 動く | ジェスチャー、立つ、移動する | 出ない | 4コーナー・仕分けリスニング |
| 3 まねる | 全員で同時に言う | まざる | チャンツ・キーワードゲーム |
| 4 伝える | 相手に1対1で言う | 聞かれる | インタビュー・あいさつラリー |
3年生の2学期なら、1と2を正式な参加として認めることが大事です。「指させた」「動けた」は、聞くことの目標に正面から当たっています。逆に、1時間の中に4しかない設計(全員が前で発表する、一人ずつ順番に言う)は3・4年では避けてください。
なお、同じ「声が出ない」でも高学年が恥ずかしがるほうは、自意識が育って「人前でまちがえるかもしれないこと」への感度が上がるために起こります。高学年の第一手は聞かれる人数を減らすことですが、3・4年の第一手は聞く回数を増やすことです。②と③については、高学年の記事の考え方がそのまま使えます。
見取りは声の大きさではしない
3・4年の外国語活動には数値評定もABCもなく、指導要録には顕著な事項を文章で端的に記述します。「声が小さい」を記録として残す場面はありません(外国語活動の所見の書き方)。材料になるのは、振り返りカードの1行と、指させた・動けた・うなずけたの行動観察です。
そのうえで、単元の終わりに1対1の時間を1回だけ作ってください。担任やALTが机のところを回って、1人ずつ短く言葉を交わします。名簿に印をつけていき、まだの子には先生のほうから行きます。1人15秒、35人で9分。単元の最後の時間の帯に収まります。これを入れておくと、「一度も英語を口にしないまま終わる」がなくなります。
2学期の3年生なら Let's Try! 1 の Unit 5 前後にいるころです。次の単元では、主活動の前に声を出さない活動を2つ、合格の線を最初に宣言、指名は希望者だけ、最後に1対1を1回——この4つだけ変えてみてください。単元ごとの流れは授業の進め方に、実物のPDFは単元パックにあります。
中学1年の4月に来る生徒を見てきた立場から言うと、小学校で英語を一度も口にしないまま終わった子と、小さい声でも1人には言えた子は、スタートが違います。上手に言えたかどうかは、ほとんど関係がありません。自分の声で誰かに1回届いたことがあるか。3・4年で作れるのは、そこです。