ひとことで言うと
フォニックスは、英語の文字(つづり)と音の関係を規則として教える方法です。文字 a には「エー」という名前と「ア」という音があり、c-a-t の3つの音をつなぐと cat と読める、というように、文字の名前ではなく音から単語を読めるようにします。英語圏の子どもが読みを覚える指導法で、日本では「読めない単語は覚えられない」問題への手立てとして広まりました。
出どころ
英語圏の初等教育の読みの指導法です。日本の小学校学習指導要領(平成29年告示・外国語)は、文字については「文字の読み方(名前)が発音されるのを聞いて、どの文字かが分かる」ことと、音声で慣れ親しんだ語を書き写すことまでを求めていて、つづりと音の規則(フォニックス)そのものは中学校で扱う内容です。中学校の学習指導要領は「文字と音との関係」を音声の指導事項に含めています。
授業での実際の使い方
小学校から中学校にかけて、次の順で積みます。
| 段 | やること | 校種の目安 |
|---|---|---|
| 音の気づき | 単語の最初の音を聞き分ける(apple と ant は同じ音で始まる) | 小3・4 |
| 文字の名前 | アルファベットの名前(エー・ビー)を、大文字・小文字とも | 小3・4 |
| 1文字1音 | a は「ア」、b は「ブ」のように、文字と音を1つずつ。名前と音を分けて言う | 小5・6 |
| 組み合わせ | c-a-t をつないで読む。sh・ch・ee のような2文字1音 | 中1 |
| 例外 | サイレントe(make)、母音の長短。規則に合わない語は覚える | 中1・2 |
授業では、単語を出すたびに「最初の音は?」と1回聞くだけでも積み上がります。先生が言う言葉は「名前じゃなくて、音で」です。中1で新出語を読ませるときに、規則で読める語(cat・sit・stop)と覚える語(said・one)を分けて示すと、生徒は「読める単語」を自分で増やし始めます。
よくある誤解
- 小学校でフォニックスを体系的に教えることは、学習指導要領が求めていることではありません。小学校は音の気づきと文字の名前まで。規則は中学校で扱います。
- ローマ字ではありません。ローマ字は日本語の音を文字にする規則で、英語のつづりとは対応しません。ローマ字で英語を読む癖(name を「ナメ」)は、フォニックスで直します。
- すべての単語が規則で読めるわけではありません。よく使う語ほど例外が多いので、規則で読める語と覚える語を分けて示します。
校種別の違い
| 校種 | 扱う範囲 |
|---|---|
| 小学校 | 音の気づき・文字の名前・書き写し。規則の指導は求められていない |
| 中学校 | 文字と音の関係。新出語の導入で規則を示す。中1が中心 |
| 高校 | 発音記号と合わせて、つづりから発音を推測する力に |
| 塾 | 単語が覚えられない生徒に、規則で読める語から教え直す |
この用語が出てくる教材と記事
- 音と文字をつなぐ指導|「読めない単語は覚えられない」。中学校でのフォニックスの使い方を書いた本編です。
- 文字と音をつなぐ|小学校でフォニックスをどこまで。小学校で扱う範囲の線です。
- アルファベット指導の3年間。文字の名前と形を3年間でどう積むかです。
- 語彙指導の技術。読める単語を覚えられる単語にする流れです。
- 文字と音の入口の前後はサイトワード(規則で読めない語)、発音記号(音を書き表す記号)、ミニマルペア(音の聞き分け)へ。