中1を担当しています。4月のアンケートでは「英語が好き」だった生徒が、6月には「嫌い・苦手」に変わっていきます。小学校では楽しく話していたようなのに、単語テストやノート指導が始まると急についてこられなくなる生徒が出ます。何がいけないのでしょうか。(中1担当・教職6年目)
結論: ギャップの正体は「音から文字への段差」。橋は意図的に架ける
小学校英語は音声中心(聞く・話す)、中学は最初の定期テストから文字(読む・書く)で評価されます。生徒からすると、ルールが突然変わったのに誰も説明してくれない状態です。「小学校でやったよね」という前提を一度捨てて、音から文字への橋を授業の設計として架ける——これが中1・1学期の最重要の仕事です。詳しい背景は小中接続の指導テクニックにまとめていますが、ここでは相談への処方箋を絞って書きます。
処方箋1: 「聞いて言える」を、書くより先に
新出表現は、①聞いて意味が分かる → ②口で言える → ③読める → ④書ける、の順で定着します。小学校で育てたのは①②の力です。だから授業でも、書かせるのは十分に言えるようになったあとにします。言えない文を書かせるのは、知らない曲の楽譜を清書させるようなもの。写す作業にしかならず、テストで再現できません。「まだ書かせない」は手抜きではなく、順序の設計です。
処方箋2: 書く量の階段を細かく刻む
「書けない」生徒の多くは、なぞる→写す→選んで書く→思い出して書く、の階段のどこかで一段飛ばされています。ワークシートを作るとき、この4段のどこを要求しているのかを意識してください。4月〜5月は「なぞる・写す」を厚く、6月から「選んで書く」(語群から選んで文を完成)、夏前にようやく「思い出して書く」。遅く感じるかもしれませんが、この階段を飛ばして落ちた生徒を2学期に拾い直すほうが、はるかに高くつきます。
処方箋3: 「読めるはず」を疑う
小学校で音声として知っている単語(appleやsoccer)も、文字から読めるとは限りません。むしろ「知っているのに読めない」経験は、生徒に「自分は英語ができない」という誤った結論を植え付けます。アルファベットの音(フォニックスの最小セット: 子音の基本音と短母音)を4月に10分×数回で通しておくと、「文字は音の設計図」という見方が入り、単語練習の効率がその後ずっと変わります。
処方箋4: 小学校の「楽しかった」を回収する
小学校英語の貯金は語彙や文法よりも、英語を使うのは楽しいという体験記憶です。中1の授業に、小学校でやったようなやり取り中心の帯活動(あいさつ+1往復のSmall Talkなど)を毎時間5分残してください。「中学英語=書き取りと暗記」に印象が塗り替わる前に、「知ってる楽しさ+新しくできること」の順で経験させるのが、嫌いを生まない一番の予防です。
4月の嫌いは、生徒のせいではない
中1の英語嫌いの大半は、能力でも怠けでもなく、段差の踏み外しです。段差は設計でなくせます。音を先に、書く階段は細かく、読めるはずを疑う——この3つを徹底した学級は、夏休み前のアンケートが変わってきます。