2学期に転入してきた子がいます。日本語での日常会話は少しできますが、授業中の指示や説明はまだ十分に入りません。国語や社会の時間はもちろん大変なのですが、外国語の時間も、私が日本語で説明しているあいだ、何をするのか分からないまま座っているのが見ていてつらいです。英語も日本語も両方むずかしいのだと思うと、どう手を出していいのか分かりません。(小4担任)
外国語の時間は、その子にとって条件がいちばん近づく時間です
まず、見え方を1つ変えるところから。国語や社会は、日本語で学ぶ教科です。その子だけが最初から不利な条件で座っています。
外国語は違います。英語という、学級の全員にとって母語でない言語を扱う時間です。ここで日本語の説明を減らせば減らすほど、その子と他の子の条件は近づきます。逆に言うと、いま座っているだけになっているのは英語のせいではなく、その周りを固めている日本語の説明のせいです。ここは動かせます。
起きていることを、2つに分ける
その子が固まっているとき、原因は2つのどちらかです。混ぜると手が打てません。
| 分からないもの | 見え方 | 打つ手 |
|---|---|---|
| 日本語の指示・説明 | 活動が始まると周りを見て、まねをして動き出す。動き出せば参加できる | 指示を日本語から外す(下の節) |
| 英語そのもの | 活動には入れているが、言う番で止まる。カードは取れる | 学級の他の子と同じ手でよい(参加の段) |
多くの場合、外国語の時間に起きているのは1つ目です。そして1つ目なら、その子だけのための特別な支援ではなく、授業の進め方そのものを変えることで解けます。
指示を、絵と動作と黒板に置きかえる
学習指導要領解説が、外国語活動・外国語科の配慮の例として挙げているものの中に、そのまま使えるものがあります。
また,本時の流れが分かるように,本時の活動の流れを黒板に記載しておくなどの配慮をする。
これは音声を聞き取ることが難しい児童への配慮として書かれているものですが、日本語の指示が入りにくい子にも同じように効きます。今日の45分で何を何番目にやるのかが、黒板の左端に絵と番号で貼ってあれば、説明を聞き取れなくても見通しが立ちます。
具体的には次の3つです。
- 本時の流れを、絵か記号で黒板に貼る。 ①あいさつ ②うた ③カードゲーム ④インタビュー ⑤ふりかえり。マグネット式にして毎回貼り替えるだけ
- 指示は「言う」より「やってみせる」。 これからやる活動を、ALTか子ども1人と組んで1回やってみせる。説明の日本語がゼロでも伝わる
- 教室の英語を、動作つきで固定する。 Stand up. で立つところまでを毎回セットにする。先生用のClassroom Englishを授業の流れ順に固定しておくと、その子は「この音のときはこう動く」を覚えられる
3つ目は副産物が大きいです。日本語での指示が減るぶん、学級全体が英語を聞くようになります。その子のための配慮が、そのまま授業改善になる形です。
参加の段は、そのまま使えます
声が出ない子への手立てとして4つの段を用意する話を3・4年で声が出ない相談に書きましたが、この段は日本語がまだ十分でない子にもそのまま使えます。
| 段 | すること | 声 |
|---|---|---|
| 1 聞く | 言われた絵を指さす、カードを取る | 出ない |
| 2 動く | ジェスチャー、立つ、教室の隅へ移動する | 出ない |
| 3 まねる | 全員で同時に言う | まざる |
| 4 伝える | ペアで1対1で言う | 聞かれる |
ポインティングゲーム、かるた、4コーナーは、ルールを言葉で説明しなくても、1回見れば分かる活動です。転入して間もない子が、その日のうちに学級の全員と同じことをできる場面になります。
母語や出身国の扱いは、本人に確かめてから
外国語の単元には、世界のあいさつや行きたい国を扱うものがあります(小4 Unit 1 世界のあいさつ、小6 Unit 4 行きたい国)。ここでその子の母語や出身国を扱えば、活躍の場面になる——と考えたくなるところですが、いくつか気をつけたいことがあります。
もうひとつ。英語圏以外から来た子を「英語ができる子」として扱ってしまう取り違えが、実際にときどき起こります。日本語以外の言語を話す=英語ができる、ではありません。その子にとって英語は、学級の他の子と同じく3つ目の言語であることのほうが多いです。
扱うと決めた場合は、その子1人の話にせず、学級のいろいろな子の「家で使うことば」を並べる形にすると自然になります。方言も入れてかまいません。
評価は、記録に残す場面を減らして行動観察を厚くする
日本語での説明が前提になっている評価の場面は、この子にとって英語の力を測るものになりません。ふりかえりカードの自由記述、日本語で書く自己評価、日本語の指示で始まるパフォーマンステスト。ここで低く出た記録は、英語の記録ではなく日本語の記録です。
国立教育政策研究所の参考資料が示す進め方は、そもそも毎時間記録に残すことを求めていません。記録に残す評価の場面を単元の中で絞り、その子については行動観察を厚くする——指させた、動けた、まねて言えた、1人に伝えられた——という形にします。考え方は評価規準の作り方に、3・4年の外国語活動の書き方は外国語活動の所見にまとめました。3・4年の外国語活動には数値評定もABCもなく、指導要録には顕著な事項を文章で端的に記述します。
「見ていてつらい」について
ご相談の中に「見ていてつらい」という一言がありました。ここについて、ひとつだけ。
転入してきた子にとって、教室に自分を見ている大人が1人いることは、それだけで大きなことです。外国語の45分で何をどこまでしてあげられるかは、正直なところ限りがあります。ただ、座っているその子を見て、つらいと感じている担任がいる教室と、気づかれずにいる教室は、その子にとってまったく違います。
来週の1時間で、本時の流れを黒板に貼る。それだけでも、その子の45分は変わります。全部を今日そろえなくて大丈夫です。