5年生になって外国語が教科になってから、「英語きらい」「英語の時間いやだ」と言う子が数人出てきました。同じ子たちが、3・4年のときは外国語活動を楽しみにしていたと前の担任から聞いています。テストや成績がつくようになったせいだと思うのですが、だからといって成績をやめるわけにもいかず、どうしたらいいのか分かりません。(小5担任)
「英語きらい」は、たいてい英語のことを言っていません
先に、この言葉の読み方から。5年生が「英語きらい」と言うとき、その中身はほとんどの場合こうです。
- 45分のうち、何をしているか分からない時間が長い
- 前に出て言ったとき、うまくいかなかった記憶がある
- 自分より言える子がいることが、はっきり見えるようになった
英語という教科そのものを評価している子は、まずいません。「英語きらい」は、英語の時間にいる自分のことを言っています。だから手を打つ先も、英語を好きにさせる方向ではなく、その時間の自分を嫌いにならずにすむ設計のほうになります。
そして、前の担任から聞いたという「3・4年のときは楽しみにしていた」は、とても大事な情報です。その子たちは英語が嫌いなのではなく、5年生で変わった何かが合っていない、ということが分かります。
3・4年と5・6年で、子どもの側から見て変わったこと
制度としての違いは外国語活動と外国語科の違いにまとめました。ここでは、子どもの体感で何が変わるかだけを並べます。
| 変わったこと | 子どもの側の体感 |
|---|---|
| 評定がつく | できているかどうかを、いつも測られている気がする |
| 文字が入る | 耳だけでよかったのに、読めない・書けないが可視化される |
| 記録に残す評価がある | 「今日は見られている日」がある |
| 教科書がある | ページが進んでいく。ついていけないと置いていかれる |
このうち、いちばん効くのは2つ目の文字です。3・4年の外国語活動は音声だけなので、できる・できないが目に見えません。5年で四線と文字が入ると、その日から差が紙の上に残ります。「英語きらい」が5年の1学期に出るときは、まず文字を疑ってください。文字のつまずきについては読み書きにつまずく子への相談に、学習指導要領解説が示している配慮も含めて書きました。
①わからない時間を、45分から削る
嫌いの入口でいちばん人数が多いのはここです。手は2つあります。
ひとつは、指示を日本語で1回、英語で1回にすること。英語だけで通そうとすると、聞き取れなかった子は活動が始まるまで何をするか分からないまま座っています。その3分が積み重なります。順番は英語→日本語ではなく、日本語→英語のほうが安全です(英語のあとに日本語が来ると、英語を聞かなくなります。先に日本語で見通しを作り、英語は「今のことだね」と確認させる形にします)。
もうひとつは、見本を必ず先に見せること。ALTと、あるいは子ども1人と組んで、これからやることを1回やってみせます。説明を聞いて分かる子は3割で、やっているところを見れば9割が分かります。ALTと組む45分の進行台本は、この見本の位置を決めて組んであります。
②失敗の記憶は、聞かれる人数の設計で減らせる
前に出て言えなかった、笑われた、という記憶は1回で残ります。高学年は自意識が育つ時期なので、なおさらです。
指名の順番を、全体で同時に→列や班で→ペアで1対1→希望者だけが全体の前で、の順に組み替えてください。詳しくは高学年が恥ずかしがって声が出ないに書きましたが、要点は「聞かれる人数を減らす」ことです。全体の前での指名を、少なくとも当面はやめてかまいません。
③比べられる痛みは、「できた」の線を動かして減らす
英語を習っている子がいる学級では、英語力で比べると必ず同じ子が上に来ます。そこで、その45分の「できた」を英語力から外します。
- 何人と交わせたか
- 相手の言ったことを聞き取れたか
- 最後まで英語で言い切れたか(1語でも)
- 相手の話に一言返せたか(Oh! / Me too. / Nice!)
これらは、英語を習っている子が自動的に有利になる項目ではありません。むしろ、会話を落とさない12のことばにあるような聞き返しや一言返しは、先へ先へ進みたい子ほど飛ばしがちです。ふりかえりカードの項目をこちらに寄せると、学級の中の「できる」の順番が変わります。
なお、態度の評価は英語が得意かどうかを見るものではありません。国立教育政策研究所の参考資料が示す評価規準の文末は「伝え合おうとしている」です。上手に伝え合えたかではなく、伝え合おうとしたか。ここは評価規準の作り方に詳しく書きました。
もう嫌いだと言っている子には
ここまでは学級全体の設計です。すでに口に出している子には、個別の手が要ります。3つあります。
単元に1回、1対1で話す。 机を回りながら、その子と15秒だけ英語で交わします。名簿に印をつけていき、印のない子のところへ先生から行きます。誰にも聞かれない場所で1回言えた、という事実だけを作ります。
役割を渡す。 英語ができることと関係のない役割が、外国語の時間にはたくさんあります。カード配り、タイマー係、音源のスタート、ALTを教室まで迎えに行く係。役割がある子は、その時間に居場所ができます。
その子の得意が主役になる単元を待つ。 図工が得意な子には小5 日本のすてきのポスター、生き物にくわしい子には小6 生き物と環境。単元の題材と子どもの得意が重なる回が、1年に必ず何度か来ます。そこで一度「英語の時間にほめられた」ができると、そのあとが変わります。
中1に「いつから嫌いになった?」と聞くと
中学1年生に「英語、いつから嫌いになった?」と聞くと、小学校5年と答える子が確かにいました。ただ、その子たちが挙げた理由は、文法でも単語でもありませんでした。「読めなかったのに読まされた」「みんなの前で言えなかった」——ほとんどがこの2つです。
つまり、教科になったこと自体が原因ではありません。教科になったときに増えた「人前で、できないところが見える場面」が原因です。そこは減らせます。成績をやめる必要はありません。