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英語教材ラボ 小学校版

子どもと保護者

保護者から「もっと文法を教えてほしい」と言われました

個人懇談で「歌やゲームばかりで中学校で困るのでは」「be動詞くらい教えてほしい」と言われたときに、何を説明すればよいかをまとめました。小学校で扱う600〜700語と音声中心の設計、発音と綴りの関連付けは中学校からという解説の線、3・4年70時間+5・6年140時間で積んでいるもの、そして懇談でそのまま言える3つの言い方まで。塾を否定しない説明の仕方も。

公開 2026-08-31・更新 2026-08-31

個人懇談で、保護者の方から「外国語の授業は歌やゲームばかりだと子どもが言っている。あれで中学校に行って困らないのか」「be動詞くらいは教えてもらえないのか」と言われました。塾に通わせているご家庭で、悪意があるようには見えませんでした。ただ、その場でうまく説明できず、「そうですね、検討します」のようなことを言ってしまい、あとから情けなくなりました。(小6担任)

その場で答えられなくて当然の質問です

まず、うまく説明できなかったことについて。この質問に即答するには、小学校の外国語がどういう設計になっているかを一度言語化しておく必要があります。そして担任の先生がその整理をしている時間は、ふつうありません。答えられなかったのは、準備の問題であって、力量の問題ではありません。

そのうえで、この保護者の方が言っていることを分解します。「文法を教えてほしい」は要望の形をしていますが、中身は心配です。中学校に行ったときに、うちの子だけ困るのではないか。ここが本体です。

だから、説明するべきは文法をやるかやらないかではなく、中学校の最初に何が要るのかと、小学校でそこに向けて何を積んでいるのかの2つになります。この順で話すと、たいてい通ります。

小学校の外国語が扱う範囲を、数字で持っておく

懇談で数字が1つあると、話が急に落ち着きます。学習指導要領解説 外国語活動・外国語編から、そのまま使えるものを3つ。

数字中身
600〜700語程度3・4年の外国語活動で扱う語を含む、小学校で指導する語数
210単位時間3・4年が2年間で計70、5・6年が2年間で計140
5領域聞く/読む/話す[やり取り]/話す[発表]/書く

解説は、この600〜700語について「中学校の外国語科の学習の土台として十分な」語数だとしています。歌やゲームの時間に見えていたものが、この語数を音で入れるための時間です。

「文法用語を出さない」のは、そう決まっているからです

小学校で be動詞という言い方をしないのは、手を抜いているからではありません。解説は、今回の改訂の趣旨としてこう書いています。

文及び文構造の指導に当たっては,文法の用語や用法の指導を行うのではなく,言語活動の中で基本的な表現として繰り返し触れることを通して指導することとした。

文法の用語や用法の指導は行わない、と明記されています。かわりに求められているのが「繰り返し触れる」ことです。

音と文字の関係にも、同じように線が引かれています。

その際,中学校で発音と綴りとを関連付けて指導することに留意し,小学校では音声と文字とを関連付ける指導に留めることに留意する必要がある。

さらに解説は、「発音と綴りとを関連付けて指導すること」は中学校の外国語科における指導事項としている、と念を押しています。この線の詳しいところは文字と音をつなぐにまとめました。

「書くこと」の目標も同じ考え方です。

大文字,小文字を活字体で書くことができるようにする。また,語順を意識しながら音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写すことができるようにする。

「語順を意識しながら」は入っていますが、「書き写す」です。自力で英作文を書かせることは求められていません。そして両方の目標に「音声で十分に慣れ親しんだ」がついています。音が先、文字があと。これが小学校の設計です。

be動詞という用語を出さずに、I am / You are / He is を歌と会話で何十回も口に入れる。中学1年でその用語が出てきたとき、子どもの中にはもう音があります。順番が逆だと、用語は覚えたけれど口から出ない、という状態になります。

懇談でそのまま言える3つの言い方

用語の説明を保護者にするのは、あまり得策ではありません。次のような言い方のほうが伝わります。

言われたこと返す言い方
「歌やゲームばかりで」「小学校は600語くらいの英語を、耳と口から入れる6年間なんです。中学校で文法として習うときに、もう音を知っている状態にしておくのが役割になっています」
「be動詞くらい教えて」「用語は中学校で出てきます。小学校では、I am ○○. を用語なしで100回言う時間を取っています。用語が出たときに『あ、これか』となるほうが、あとが速いんです」
「中学校で困りませんか」「中学校の最初につまずくのは文法ではなく、文字のほうが多いです。学校ではそこを見ています。ご家庭で心配でしたら、音読を聞いてあげるのがいちばん効きます」

3つ目が本題です。中学校の最初に何が必要かは小学校の英語だけで中学校についていけるかに詳しく書きましたが、要点は、中1の4月に効くのは会話力ではなく文字だということです。ここを保護者と共有できると、心配の向き先が変わります。

塾を否定しない

塾に通わせているご家庭には、そのことを否定する言葉を使わないほうがいいです。理由は2つあります。

ひとつは、実際に否定する理由がないから。塾で先に文法を習っている子が学校で困ることは、ほとんどありません(学級全体としての差の扱いは習っている子と初めての子の差に書きました)。

もうひとつは、否定すると学校での様子を伝えてもらえなくなるからです。「うちの子が英語をいやがっている」のような話は、学校を信頼している保護者からしか出てきません。

家庭でできることを聞かれたら、次の3つを渡してください。どれも塾と競合しません。

  • 音源を流す。 教科書付属の音源やデジタル教科書の音声を、宿題としてではなく、聞き流しでよいので家で流す
  • 音読を聞く。 内容が合っているかは見なくてよく、声が出ていればほめる
  • 書き写しを見てあげる。 四線からはみ出していないか、b と d が入れ替わっていないか。中身の英語は見なくてよい

3つとも、保護者に英語力が要りません。ここが大事なところで、「家で英語を教えてください」に聞こえる助言は、英語が苦手な保護者を追い詰めます。

その場で「検討します」と言ってしまったことについて

最後にひとつだけ。その場で言い返せず、あとから情けなくなった——という感じ方は、多くの先生が持っているものだと思います。ただ、あの場面で「検討します」と答えたのは、判断としてはむしろ穏当でした。準備のない状態で制度の説明を始めると、たいてい防御的に聞こえます。

次に同じことを言われたときのために、上の表の3つの言い方だけ持っておいてください。数字を1つ言えると、話は驚くほど早く終わります。

中学校で英語を教えていたころ、小学校の授業について保護者から同じ心配を聞くことが何度もありました。ただ、実際に中1で伸びていったのは、文法を先に知っていた子ではなく、英語で何かを言おうとすることに抵抗がない子のほうでした。歌とゲームに見えている時間が作っているのは、そこです。

執筆: 英語教材ラボ編集部

首都圏の公立中学校で英語を10年教えた元教員が、小6の英語が中1でどうつながるかを見てきた立場から書いています。制度・評価の記述は、学習指導要領と国立教育政策研究所「指導と評価の一体化」参考資料、文部科学省の通知・研修ガイドブックにあたって確認しています。詳しくは教材のつくり方と運営者情報へ。

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