同じ学年を3人で持っているのに、進度が2単元ずれている。定期考査は作問者が持ち回りで、形式が回ごとに変わる。自分のクラスだけ平均点が10点低くて、生徒から「先生のテストは難しい」と言われる。
これは高校では珍しいことではありません。中学が学年で同じ授業をするのに対して、高校は教員間で指導内容の共通性が薄く、テスト形式すら作問者ごとに変わる、というのが実態です。神奈川県立国際言語文化アカデミアが県内の高校教員46名と実際の定期テスト21件を分析した研究では、テスト作成の質が「生徒の英語力ではなく学校の文化・教師集団に依存する」と結論づけられています。個人の力量の問題として抱え込む話ではありません。
全部そろえようとすると、失敗する
若手が最初に試みて、たいてい壊れるのがこれです。進度・教材・活動・テスト・評定の付け方を一度にそろえようとすると、それぞれの授業の作り方まで否定することになり、話が合意ではなく評価の話に変わります。
授業の作り方は、そろえなくても困りません。困るのは、生徒の点数に直接効くところだけです。そこに絞れば、合意は1回の打ち合わせで取れます。
そろえて効く3つ
1. 出題範囲の言い方
「範囲: Lesson 5〜6、プリント」だけの告知だと、クラスによって準備の量が変わります。そろえるのは範囲そのものではなく、書き方の粒度です。
Lesson 5〜6の本文(初見の英文が1題出ます)/教科書p.62〜71の練習問題/配布プリント3〜5/単語テスト第8〜12回
初見の英文が出ることを範囲に書いておくのは重要です。書いていないと、生徒は本文暗記に時間を全部使います。定期テストの読解問題に教科書の英文だけを使う学校は52.2%という調査があり、そこでは範囲を告げた瞬間にテストが暗記の勝負になります。
2. 観点の配点比
観点別評価では、ここがずれると評定がクラスによって変わります。合意するのは1行だけです。
知識・技能◯% / 思考・判断・表現◯%(学期を通して固定)
比率そのものは学校の方針で動きますが、回ごとに変えないことが本体です。中間で6:4、期末で4:6とすると、同じ生徒の観点別の成績が試験の作りで動きます。
もう1つ、観点のラベリングもそろえてください。同じ研究では、語順整序を「表現の能力」に分類するなど、観点と設問が食い違う例が38.1%ありました。観点ラベル早見表は、判定を「その場で考えないと書けないか」の1つに絞った1枚です。難易度で決めない(難しい語彙問題は難しい知識・技能です)のが要点で、作問中に机の横に置いて使います。
3. 記述の採点基準
自由英作文と要約は、採点者が違えば点が違います。生徒からの申し出がいちばん多いのもここです。
そろえるのは模範解答ではなく、刻み方の原則です。
- 読みやすさは減点しない
- 1つの誤りで2か所引かない
- 「だいたい合っている」に点を出さない
- 骨格を取りちがえた答案は、単語が合っていても0点
- 語数超過は減点せず、超えた部分を読まない
この5行を紙で共有しておくと、採点会のときに「この答案は何点か」ではなく「この原則のどれに当たるか」で話せます。長文読解ラダーの発展版には、原則に加えて、想定答案3つを実際に採点してみせた例を教師面に載せてあります。合意の材料として、そのまま打ち合わせに持ち込める形にしました。
共通問題は、大問1つから始める
いきなり全部を共通にすると、作問の負担配分でもめます。始めるなら、大問1つだけの共通です。
- 次の考査で、初見読解の1題だけを共通にする(初見読解ミニテストがそのまま入ります)
- 配点と採点基準も、その1題だけそろえる
- 考査のあと、クラス別の得点分布を並べて見る
3つ目までやると、話が変わります。同じ問題で分布が違えば、原因は授業か生徒かのどちらかで、テストの作りではありません。ここが見えたところで、次の考査は共通の大問を2つに増やせます。
着任1年目にできること
年次の上の先生に「そろえましょう」とは言いにくいものです。1年目にできるのは、合意を取りにいくことではなく、材料を置くことです。
- 自分の考査を作るとき、定期テスト設計図を埋めてから作る。埋めた紙は、そのまま打ち合わせの資料になります
- 観点比と平均点の目標を、事前に自分の紙に書いておく。あとから数えた比率は説明に使えません
- 記述の採点原則を、生徒に配る面に印刷する。生徒に見せている基準は、同僚にも共有しやすくなります
3つとも、他の先生の授業には何も要求していません。それでも、次の作問者があなたの設計図を見れば、形は自然にそろい始めます。
まとめ
- そろっていないのは学校の文化の話で、個人の力量の問題ではない。
- 全部そろえない。生徒の点数に直接効く3つだけにする。
- 範囲は粒度をそろえる(初見の英文が出ることを書く)。
- 観点の配点比は学期を通して固定。ラベリングは早見表で判定をそろえる。
- 記述は模範解答ではなく、刻み方の原則をそろえる。
- 共通問題は大問1つから。分布を並べて見るところまでやる。
紙は評価とテストのページにあります。考査そのものの組み方は高校英語の中間考査、どう作るか、評定までの実務は評定を出すまでにやることに分けて書きました。