定期考査にリスニングを入れない理由を聞くと、機器か時間の話が返ってきます。ただ、入れている先生に聞くと、止まっていたのはたいてい別のところです。何を測る問題を作ればいいのかが決まらない。
教科書付属の音源をそのまま流すと、生徒は本文を覚えているかどうかで解きます。読解を本文の再掲で作るのと同じ穴で、測っているのは記憶です。かといって初見の音源を用意するとなると、スクリプトを書くところから始めることになる。ここで止まります。
先に決めるのは設問の型です。型が決まればスクリプトは短くて足ります。
聞き取りと、聞き分けを分ける
リスニングの設問は、大きく4つの型に分かれます。上2つは知識・技能、下2つは思考・判断・表現です。
| 型 | 観点 | 問い方 |
|---|---|---|
| 事実の聞き取り | 知識・技能 | だれが、どこで、何をしたか |
| 数字・時刻の照合 | 知識・技能 | 何時に会うか。表と照らしていくらになるか |
| 意図・態度の推測 | 思考・判断・表現 | この人はどう感じているか。この返事は承諾か断りか |
| 複数情報の照合 | 思考・判断・表現 | 3人の希望を聞いて、条件に合う案を選ぶ |
大事なのは、1つの大問に型を混ぜないことです。混ぜた瞬間に、その大問の観点が決められなくなります。事実の聞き取りが3問あって最後の1問だけ意図の推測、という作りをすると、その大問は知識・技能でも思考・判断・表現でもない何かになります。
学年で分けるなら、1年生は上2つだけで十分です。2年生から意図・態度を1問、3年生で複数情報の照合を入れる。この順で上げていくと、生徒の側からも何が上がったのかが見えます。
スクリプトは短くていい
型が決まれば、スクリプトは驚くほど短くて足ります。事実の聞き取りなら40語から60語、意図の推測で60語から90語、複数情報の照合でも100語から140語がめやすです。
書くときの原則が3つあります。
1文を短くすること。15語を超えると、聞き取りではなく記憶の勝負になります。数字は1回しか言わないこと。2回言うと、聞き取りではなく書き取りになります。そして、言い直しや Well, ... を入れること。自然になり、難しさは上がりません。むしろ、間があるぶん聞きやすくなります。
固有名詞は問題用紙に印刷しておきます。人名や地名が聞き取れずに全問落とす、という失点はテストで測りたいものではありません。
選択肢にも1つだけ原則があります。聞こえた語をそのまま含む選択肢を正解にしないこと。語の一致だけで当たるようになります。誤答のほうに、聞こえた語を1つずつ入れておくのが基本形です。
読む回数は、観点で変える
知識・技能の型は2回、思考・判断・表現の型は1回。全部2回にすると時間が足りなくなり、削られるのはたいてい思考・判断・表現のほうです。
読み上げの順序も決めておくと、当日ぶれません。回数を必ず言う。問題用紙を見る時間を15秒とる。1回目を読む。10秒あける。2回目を1回目と同じ速さ、同じ間で読む。速さは1分あたり110語から130語がめやすで、2回目を速く読むと不公平になります。
配点は満点の15%から25%が置きどころです。それ以上にすると、座席や体調で点が動きすぎます。逆に10%を切ると生徒は練習しません。練習させたい量と配点は連動します。
スピーカーが無くても回る
音の環境は学校差が大きいところです。教室にスピーカーが無いなら、教師が読みます。棒読みにせず、役ごとに体の向きを変えると、だれの発言かが伝わります。
音が反響する教室では、いちばん後ろの席の生徒に手を挙げてもらってから始めます。1回目の前に確認するだけで、あとの苦情がなくなります。
聞こえにくい生徒がいる場合は、スクリプトを手元に置く配慮を事前に本人と決めておきます。当日その場で決めると、本人にも周囲にも負担になります。
日常の練習も、装置は要りません。帯活動で1分、教師が短い英文を読んで事実を1つ聞き取らせる。これだけで、テストの1問目が落ちなくなります。
採点で決めておくこと
書き取りの設問では、つづりを問わないと決めて、その旨を問題用紙に刷ります。つづりを見るなら、それは知識・技能の語彙の設問です。数字は算用数字でも英単語でもよいことにします。
意図・態度の設問で採点が割れたら、スクリプトのその1文を読み直します。判断の根拠が1文に無ければ、答案ではなく設問のほうが悪い。次の年に直せばいい話です。
作問の記入欄と読み上げ台本、機器が無いときの回し方まで入れた版下は、評価とテストの道具にリスニング作問キットとして置いてあります。観点の割りつけは同じページの観点ラベル早見表、大問の並べ方と想定時間は定期テスト設計図に合わせてください。リスニングを入れると想定時間が10分前後増えるので、設計図の合計を先に引き直してから作問に入ると、当日「時間が足りない」が起きません。