ひとことで言うと
訂正フィードバックは、生徒の誤りに対して教師や仲間が返す、直すための反応のことです。話す活動では、その場で言い直して返すリキャストから、「もう一度言って」と引き出すものまで6種類に分けられ、書く活動では、正しい形を書き込む直接的なものと、印だけつけて生徒に直させる間接的なものに分かれます。英作文の「添削」は、この書く側の訂正フィードバックのことです。
出どころ
第二言語習得研究の用語で、話すときの6種類はライスターとランタ(1997年)の教室観察の分類が元です。書くときの分類(直接・間接、メタ言語的、焦点化・非焦点化)はロッド・エリス(2009年)の整理が広く使われています。日本語教育でも同じ語が使われるので、検索すると日本語教師向けの解説が多く出てきますが、中身は英語の授業と同じです。
話すときの6つの種類(明示的と暗示的)
生徒が I go to the zoo yesterday. と言ったときの、6つの返し方です。分け方の線は研究者によって少し違いますが、「誤りだとはっきり示すか(明示的・暗示的)」と「正しい形を先生が言うか、生徒に言わせるか」の2つの軸で並べると、使い分けが見えます。
| 種類 | 返し方の例 | 明示的・暗示的 | 正しい形 |
|---|---|---|---|
| リキャスト | Oh, you went to the zoo. | 暗示的 | 先生が言う |
| 明示的訂正 | Not go. Went. You went to the zoo. | 明示的 | 先生が言う |
| 明確化要求 | Sorry? | 暗示的 | 生徒に言わせる |
| メタ言語的フィードバック | Yesterday. Past or present? | 明示的 | 生徒に言わせる |
| 引き出し | Yesterday you ...? (途中で止めて続きを言わせる) | 明示的 | 生徒に言わせる |
| 繰り返し | I go to the zoo yesterday? (go を強め、上げ調子で) | 暗示的 | 生徒に言わせる |
暗示的な返し方は会話の流れを保ちやすい代わりに、生徒が直されたと気づかないことがあり、明示的な返し方は気づかれやすい代わりに、会話が止まりやすくなります。生徒に言わせる4つ(明確化要求・メタ言語的フィードバック・引き出し・繰り返し)は、生徒が自分で直す機会を作る返し方で、ねらいの文法を練習している時間に向いています。どの場面でどれを使うかは、次の節の表のとおりです。
授業での実際の使い方
話す活動と書く活動で、使う種類を分けます。
| 場面 | 種類 | やること |
|---|---|---|
| 話す(活動中) | リキャスト | 誤りを正しい形で言い直して返す。活動は止めない |
| 話す(活動後) | 引き出し・メタ言語的 | 中間指導で「動詞の形は?」と聞き、生徒に直させる |
| 書く(初稿) | 間接・焦点化 | 今日の文法に関わる誤りだけに印(記号)をつけ、正しい形は書かない |
| 書く(書き直し) | 直接 | 生徒が直せなかった箇所だけ、正しい形を書く |
英作文の添削は、次の3つを決めると回ります。焦点を絞る(今日の目標の文法だけ。つづりや冠詞はこの回は見ない)、記号を使う(sp=つづり、v=動詞の形、ww=語の選び方、^=抜け。学期の最初に配って全員同じ記号)、書き直しまでを1セットにする(印をつけて返し、翌日に書き直しを出させる。書き直しが無い添削は定着しません)。
全部を赤で直すと、生徒は赤の多さだけを見て中身を読みません。1枚に印は5つまで、と決める先生が多いです。ペアで記号をつけ合う相互評価にすると、教師の添削は書き直し後の1回で済みます。
よくある誤解
- 全部直すのが親切、ではありません。直す箇所を絞ったほうが、生徒はその箇所を覚えます。
- 直せば伸びる、でもありません。直したものを生徒が書き直して初めて定着します。返して終わりの添削は、時間の割に効果が薄い作業です。
- 生徒が添削を読まないのは生徒のせいだけではなく、赤が多すぎて読めない設計のせいでもあります。
校種別の違い
| 校種 | 特徴 |
|---|---|
| 小学校 | 書く量が少ないので、書き写しの正確さを見る。話すときはリキャストだけで、言い直しは求めない |
| 中学校 | 記号と焦点化で、35人分を回す設計に。定期テストの英作文は採点基準を先に示す |
| 高校 | 論理・表現の80〜120語を、内容・構成・語彙・文法の4観点で。文法の誤りは間接、内容は直接コメント |
| 塾 | 個別指導はその場で直接直せるが、生徒に先に見つけさせる時間(1分)を置くと定着が違う |
この用語が出てくる教材と記事
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- 英作文の添削が終わりません。全員分を赤ペンで直すと返却が遅れる、へのお悩み相談です。
- 英作文の採点をぶれさせない。部分点の刻み方と採点例の作り方です。
- 話すときの言い直しはリキャスト、活動後に全体へ戻す時間は中間指導、生徒どうしで記号をつけ合う形は自己評価と相互評価へ。