ひとことで言うと
学習方略は、英語を覚えたり使ったりするために、学習者が自分で選んで使う方法です。単語を語呂や絵で覚える、分からない語を別の言い方で切り抜ける、今週の学習を計画して振り返る、間違いを怖がらない気持ちを保つ、友だちに聞く。こうした「勉強のしかた」そのものを指し、教えることができます。英語が伸びる生徒は、無意識にこれを持っています。
出どころ
第二言語習得の研究で、レベッカ・オックスフォードが1990年に、記憶・認知・補償・メタ認知・情意・社会的の6種に分類したものが広く使われています。日本の学習指導要領は「学習方略」の語を使いませんが、「主体的に学習に取り組む態度」の「自らの学習を調整しようとする側面」は、メタ認知方略にあたります。
授業での実際の使い方
授業で教えやすい3つの方略を、帯や振り返りの中に置きます。
| 方略 | 種類 | 教え方 | 先生が言う言葉 |
|---|---|---|---|
| 言い換えて切り抜ける | 補償 | 単語が出てこないときに「a thing for ...」「like ...」と言う練習を帯で | 「単語がなくても、説明して」 |
| 自分でテストする | 記憶・メタ認知 | 単語を覚えるときに、隠して言えるかを確かめる(見て覚えるより効く) | 「見て覚えない。隠して言う」 |
| 学習を計画して見直す | メタ認知 | 単元の初めに「今週やること」を1行、終わりに「できたこと・次」を1行 | 「次は何を変える?」 |
先生がやるのは、方略を「やって見せる」ことです。単語の覚え方なら、先生が実際に隠して言うところを見せる。1つの方略を2週間続けてから次に移すと、生徒の習慣になります。
「勉強のしかた」を教える帯の型
1つの方略を、授業の始めの帯(3〜5分)で2週間回す型です。「言い換えて切り抜ける」を例にします。
| 時期 | やること | 例 |
|---|---|---|
| 1日目(5分) | 方略に名前をつけ、先生がやって見せる | 「今日から『言い換えて切り抜ける』」。先生が eraser を言わずに It's a thing for ... と説明し、生徒が当てる |
| 2〜4日目(各3分) | ペアで練習する。お題のカードの語を言わずに、相手に当てさせる | It's an animal. It's like a big cat. のような言い方を、黒板の型(a thing for .../like ...)を見ながら |
| 5日目(2分) | 使えたか・効いたかを1行で振り返る | 「どの言い方が通じた?」を振り返りシートに1行 |
| 2週目 | 帯を短くし、授業の活動の中で使わせる | ペア活動で単語が出てこなかったら、日本語に逃げる前に言い換える、を約束にする |
名前をつけてやって見せ、練習させ、効いたかを振り返らせ、ほかの場面に広げる、という順は、チャモットらが CALLA で示した「方略をはっきり教える」流れと同じ考え方です。名前があると、授業中に「いま、言い換えて切り抜けたね」とほめられ、生徒が自分の方略として意識できます。
よくある誤解
- 「勉強しなさい」と言うことではありません。方略は「どうやるか」の中身で、それを教えずに量だけ求めても伸びません。
- 上位の生徒だけのものではありません。むしろ、伸び悩む生徒ほど方略を持っていないので、教える効果が大きいです。
- 一度教えれば身につく、わけではありません。授業の中で使う場面(帯・振り返り)を作って、続けて初めて定着します。
校種別の違い
| 校種 | 扱い |
|---|---|
| 小学校 | 「分からないときに聞き返す」「身ぶりで伝える」が補償方略。困ったときのえいごのポスター |
| 中学校 | 単語の覚え方と、言い換えの帯、振り返りの1行。3つから |
| 高校 | 長文の読み方の方略(先に設問を見る・分からない語を飛ばす)と、学習計画 |
| 塾 | 家庭学習の「やり方」を教えるのが塾の価値。隠して言う・間違えた問題だけ解き直す |
この用語が出てくる教材と記事
- 語彙指導の技術。「覚えさせる」から「想起させる」への転換は、記憶方略そのものです。
- 宿題の設計。家庭学習のやり方を宿題に組み込む考え方です。
- アルファベット・教室英語(小学校)。困ったときの言い方(補償方略)のポスターです。
- 評価の観点としての側面は主体的に学習に取り組む態度、見直しの場は振り返りへ。