今年から高学年に外国語の専科の先生が入りました。週2時間、担任は教室にいなくてよいことになり、その時間は空き時間として使っています。正直に言うと楽になったのですが、子どもたちが英語の時間にどんな顔をしているのか、まったく分からなくなりました。1学期の所見を書くときに何も書けず、専科の先生に聞きに行ったのですが、35人ぶんを口頭で聞くのは無理でした。(小6担任)
楽になったことに、うしろめたさを持たなくて大丈夫です
先にここだけ。空き時間ができて楽になった、というのは正当な話です。小学校教諭の授業準備時間は、全教科合わせて平日1日あたり76分しかありません(教員勤務実態調査 令和4年度確定値)。週2時間が空いたことの意味は小さくありません。
問題は、楽になったこと自体ではなく、授業だけが手を離れて、書類が手元に残っているという状態のほうです。ここは整理できます。
専科が入っても、担任が消える設計ではありません
学習指導要領解説 外国語活動・外国語編は、専科指導についてこう書いています。
中・高等学校の英語の教員免許を有する小学校の教師等,専門性を有する教師が専科指導を行うなど,教科化に対応するため専門性を一層重視した校内体制の整備を進めることも大切である。その場合も,学級担任の教師と同様に初等教育や児童を理解し,授業を実施することが大切である。
専科指導を進めることは大切だ、と書いたうえで、その場合も担任と同じように児童を理解して授業をすることが大切だ、と続きます。つまり、専科が入ることで消えるのは担任の授業であって、児童理解のほうは消えません。むしろ、その学級の子を1年かけて見ているのは担任だけなので、専科の先生にとって担任は情報源です。
困っていることを、3つに分ける
「何をすればいいか分からない」の中身は、たいてい次の3つが混ざっています。
| 困りごと | 実体 | 手 |
|---|---|---|
| ①様子が見えない | 週2時間、教室にいないので子どもの英語の顔を知らない | 見に行かず、聞くことを3つに絞る |
| ②所見が書けない | 材料がゼロのまま学期末が来る | 単元名と観点があれば書ける(下の節) |
| ③関係が切れる | 英語の話題で子どもと話せない | 教室の掲示と、ふだんの英語で足りる |
①を「毎回見に行く」で解こうとすると、空き時間がなくなって元に戻ります。そうではなく、必要な情報だけを取りに行く形にします。
専科の先生に、学期1回・5分で聞く3つ
35人ぶんを口頭で聞くのは無理です。聞くのは次の3つだけにします。
| 聞くこと | 使いみち | 形 |
|---|---|---|
| 今学期に扱った単元名と、その単元で「言えるようになったこと」 | 所見の主語になる | 紙かメールで単元名だけもらう |
| パフォーマンステスト・小テストの記録 | 3観点のうち知識・技能と思考・判断・表現の材料 | 名簿の形でコピーをもらう |
| 気になる子(5人まで) | 個別の所見と、生活指導 | 口頭で5分 |
3つ目を5人までに区切るのがコツです。「気になる子はいますか」と聞くと答えにくいのですが、「気になる子を5人まで挙げるとしたら」と聞くと出てきます。
そして、この3つはこちらから紙の形を渡したほうが早く集まります。単元名を書く欄と、名簿の欄と、気になる子の欄がある1枚を、学期の3週間前に職員室の机に置く。専科の先生は複数の学級を持っているので、口頭で聞かれるより紙のほうが助かります。
所見は、単元名と観点があれば書けます
材料が3つそろえば、あとは組むだけです。小学校外国語の所見は、単元でやった活動と観点の組み合わせでできています。
しょけんビルダーは、単元を選んで、観点を選んで、子どもの様子を選ぶと文案が出る無料ツールです。文例は教科書の単元に連動していて、3観点のほかに、はげまし型と中学校への接続型を持っています。児童の名前を入力しない設計なので、学校の端末でも使えます。単元別の文例そのものは所見文例集に、書き方の型は所見の書き方にまとめました。
専科が入っている学級で書くときのコツが1つあります。所見の主語を「英語の力」ではなく「その単元でやったこと」に置くことです。「単語をよく覚えていました」は授業を見ていないと書けませんが、「『行きたい国』の単元では、選んだ国の魅力を3つの文で紹介しました」は、単元名と成果物があれば書けます。そして後者のほうが、保護者にとっても具体的です。
担任にできる援護は、英語の時間の外にあります
授業を持っていなくても、その学級の英語が育つ場所は45分の外にたくさんあります。
- 教室の掲示を担任が持つ。 単元で使う語のカードや会話を落とさない12のことばを教室に貼っておく。専科の先生は自分の教室を持たないことが多いので、掲示は担任にしかできません
- ふだんの生活で英語を1つ使う。 朝の会の Good morning. と How's the weather? だけでも、週2時間が週5日になります
- 行事と結ぶ。 解説は、言語活動の題材を学校行事で扱う内容と関連付ける工夫を挙げています。運動会や学習発表会を、専科の先生に「単元の題材に使えませんか」と持ちかけられるのは担任です
3つ目は、専科の先生にとってかなりありがたい提案になります。理由は次の節です。
専科の先生の側の事情
英語専科の先生の多くは、複数の学級、場合によっては複数の学校を掛け持ちしています。1日に4〜5学級を回り、それぞれの学級の実態を短時間でつかまなければなりません。学校行事の予定も、その学級の子の人間関係も、担任ほどには分かりません。
だから、担任から「今週は運動会の練習で疲れています」「この班はいま組み替えたばかりです」と一言もらえることは、専科の先生の側の助けになります。情報は一方通行ではなく、交換にしたほうが続きます。
授業交換で、自分が他教科を持つ場合
専科ではなく、担任どうしの授業交換で外国語を外れている場合は、少し事情が違います。相手も担任なので、学期1回5分の打ち合わせは取りやすい一方、相手の学級の教科をこちらが持っているぶん、負担は相殺されていません。
この場合は、所見の分担を最初に決めておくことをおすすめします。外国語の所見を、交換相手が下書きして担任が整えるのか、材料だけもらって担任が書くのか。年度当初に決まっていないと、毎学期もめます。学年会で1回決めて、学年の申し合わせとして残しておくと楽です。
見えなくなったこと自体について
最後に、はじめの一文に戻ります。「どんな顔をしているのか分からなくなった」というのは、担任として自然な気持ちだと思います。専科制の目的は指導の専門性を上げることであって、担任と子どもの距離を離すことではありません。
そのうえで、週2時間ぶんの顔は、たしかに見えなくなります。かわりに空いた2時間で、その学級の別の何かを見られるようになったはずです。全部の教科を自分で見ていた去年より、見えているものが減ったのか増えたのかは、学期末に一度、静かに数えてみる価値があります。