英語教材ラボ

授業運営の技術

発問の技術|事実・推論・評価の3段階で読みを深くする

英語授業の発問を設計する技術。本文に答えが書いてある事実発問、行間を読ませる推論発問、自分の考えを言わせる評価発問の3段階の使い分け、答えやすい発問の並べ方、Yes/No発問とWH発問の階段、沈黙が生まれたときのリカバリーまで中学英語向けに解説します。

公開 2026-07-19・更新 2026-07-19

同じ教科書本文を扱っても、クラスの読みが浅く終わる授業と、生徒が本文に戻って考え込む授業があります。差を作っているのは、多くの場合、教材ではなく発問です。発問は授業中の思いつきで出すものではなく、本文研究の段階で設計しておく授業の部品です。

発問の3段階——どこに答えがあるか

発問は「答えのありか」で3種類に分かれます。この分類を持つだけで、発問づくりが体系的になります。

段階答えのありか例(ある少年がイヌを拾う話なら)
事実発問本文の中に書いてあるWhat did Ken find in the park?(公園で何を見つけた?)
推論発問本文にヒントはあるが直接は書いていないWhy didn't Ken tell his mother?(なぜ母親に言わなかったのだろう?)
評価発問生徒の中にしかないWhat would you do?(あなたならどうする?)

事実発問は理解の確認、推論発問は行間を読む思考、評価発問は本文と自分をつなぐ表現の入り口です。どれが偉いという話ではなく、順番に意味があります。事実で土台を固めないまま推論を問うと当てずっぽう大会になり、推論を飛ばして評価だけ聞くと本文と関係ない感想文になります。

この階段は、リーディング・ラダーの設問構成(事実→事実→推論→語彙・自分)と同じ設計です。ワークシートの設問も授業の口頭発問も、原理は変わりません。

答えやすさの階段——形式でも調整する

内容の3段階とは別に、答える形式にも階段があります。

  1. Yes/No で答えられる発問: Did Ken like the dog?
  2. 選択肢つき発問: Did Ken feel happy or sad?
  3. 一語で答えられるWH発問: Where did Ken go?
  4. 文で答えるWH発問: Why did Ken go there?

授業の前半や、自信のないクラスでは1〜2から入って、4へ登ります。同じ内容でも、Why do you think so? をいきなり全体に投げるのと、まず Happy or sad? で全員に立場を取らせてから Why? を重ねるのとでは、挙手の数がまるで違います。立場を先に取らせると、理由は言いたくなるものです。

発問のあとの技術——待つ・返す・広げる

発問は言い放って終わりではありません。あとの3手までがセットです。

  • 待つ: 発問から指名までを最低3秒あける。沈黙が怖くてすぐ自答したりヒントを重ねたりすると、生徒は「待てば先生が答える」と学習します。3秒は教室では長く感じますが、思考には短いくらいです。
  • 返す: 出た答えをそのまま受け取らず、Do you agree?(同じ考えの人?)と教室に返します。教師と挙手した1人の対話を、教室全体の対話に広げる基本の動きです。
  • 広げる: 正解が出たら Anything else?(他には?)。正解が1つ出た瞬間に思考を止めないための一言です。

ペアで30秒相談してから指名する「相談タイム」も、挙手が少ないクラスの定番のリカバリーです。個人への発問を一度ペアの発話にすることで、全員が一度は口を動かした状態で指名できます(この構造の話はペア・グループ活動の技術にもつながります)。

発問を英語にする階段

発問を英語で出すか日本語で出すかは、二択ではありません。事実発問は英語で(本文の語彙がそのまま使えるので実は易しい)、推論・評価発問は英語で出して日本語の補足を添える、答えは日本語でもよい、のように段階を混ぜられます。「英語で問われて日本語で考えて答える」も立派な理解の姿です。教師の英語の調整そのものは指示の英語とTeacher Talkで扱います。

明日からの一歩

  • 次の本文の授業前に、事実3・推論1・評価1の発問メモを作る
  • 発問して3秒、心の中で数えてから指名する
  • 出た答えに Do you agree? を1回使ってみる

本文の扱いの全体像は教科書本文の授業アイデア、読み方の技術はスキミングとスキャニングの教え方へどうぞ。

紹介した教材はすべて無料PDFでダウンロードできます

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