「授業は英語で行うことを基本とする」。この方針にまじめに向き合う先生ほど、2つの失敗を経験します。英語で通して生徒を置き去りにするか、結局ぜんぶ日本語で言い直して英語が飾りになるか。
問題の立て方を変えましょう。目指すのはAll Englishという状態ではなく、教師の英語が生徒に伝わって授業が動くという機能です。そのための技術がTeacher Talk——生徒のレベルに合わせて調整された教師の話し方です。
指示の3原則: 短く・順番に・動作つき
授業でいちばん量が多い教師の英語は指示です。指示が伝わらないと活動が崩れるので、ここから整えます。
- 短く: 1文1指示。Open your textbooks to page 34 and look at the picture and talk with your partner. と一息に言うと、生徒の頭には最後の断片しか残りません。Open your textbooks. Page 34. Look at the picture. と切ります。
- 順番に: やる順番に言う。「ペアで話す前に教科書を閉じて」より Close your textbooks. Then, talk with your partner. 英語の指示は、実行順=語順にすると格段に伝わります。
- 動作つき: 言いながらやって見せる。Open(開く動作)、Page 34(指で数字を書く)、In pairs(2人を手で示す)。動作は翻訳の代わりになります。複雑な活動は、説明を重ねるより代表生徒とのデモ30秒が最速です(ペア・グループ活動の技術でも触れています)。
決まり文句を固定する——聞く負担を下げる
同じ場面で毎回同じ英語を使うと、生徒はその英語を「聞き取って」いるのではなく「認識」するようになります。これは手抜きではなく設計です。認識で処理できる指示が増えるほど、生徒の聞く体力は新しい英語に回せます。
| 場面 | 固定するフレーズの例 |
|---|---|
| 授業の開始 | Let's get started. / How are you today? |
| 配布 | Take one and pass them back. |
| 活動の開始・終了 | Ready? Go! / Time's up. Pens down. |
| 賞賛 | Nice try! / Good thinking! / I like your idea. |
| 聞き返し | Pardon? / Once more, please.(生徒にも使わせる) |
4月に10個だけ決めて、掲示して、教師が言い続ける。学期の途中で増やす。これだけで教室の英語量の土台ができます。帯活動の指示英語(帯活動ネタ20選の各活動に指示フレーズがついています)は、毎日同じ型で回すので決まり文句の定着装置としても機能します。
理解確認は Understand? ではなく行動で
Do you understand? に生徒は Yes と言います。分かっていなくても言います。理解は質問ではなく行動で確認します。
- 最初の1問だけ全体でやる: 活動に入る前に Question 1, everyone. で1問だけ一緒に解く。ここでつまずきが見えます。
- 指示の復唱を生徒に: What do you do first?(最初にやることは?)と生徒に言わせる。日本語で言わせてもかまいません。指示が伝わったかの確認が目的だからです。
- 動き出しを3秒見る: 指示のあと、教室が動き出すまでの3秒を観察する。きょろきょろが多ければ、指示をもう一段階分解して再指示します。
生徒の日本語にどう向き合うか
生徒が日本語で質問してきたとき、英語を強要して黙らせるのは本末転倒です。現実的な原則は、受けとめは柔軟に、返しは英語を混ぜて。生徒の日本語の質問に、まず内容で応え、その要点を短い英語で言い直して返します。生徒の「言いたいこと」と英語表現が結びつく瞬間は、実はこの返しの中にいちばん多く生まれます。
教師自身も、複雑な文法説明や心に関わる話(叱る・励ます)は日本語でかまいません。英語で行うべき部分——指示・挨拶・褒め・簡単なやりとり——の純度を上げる方が、総量として生徒が浴びる英語は増えます。
明日からの一歩
- 明日の授業の指示をひとつ選び、1文1指示・実行順・動作つきに書き直してみる
- 決まり文句を3つ決めて、今週は毎時間同じ英語で言う
- Do you understand? を1回、What do you do first? に置き換える
発問(考えさせる英語)の設計は発問の技術へ、指示の視覚化など全員に届く工夫は英語授業のユニバーサルデザインへ。オールイングリッシュ関連の悩みはお悩み相談にも実例があります。